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くさの戸の露の夜かくや天の川
(当館所蔵の短冊の中で最も初期の書)
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老僧の骨刺して来る藪蚊哉(明治四十年作)
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豊年も卜すべく新酒も醸すべく
(明治二十九年の作だが書は明治末から大正期)
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病時
秋の暮昼来し道を戻る哉
(明治三十二年の作だが書は明治末から大正期)
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打水に暫く藤の雫哉(色紙)
(明治三十五年の作だが書は大正期
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病時
春雨や机の上のうたひ本
(明治二十八年の作だが書は大正期)
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年々に見物顔や薪能
(明治三十二年の作だが書は大正期)
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鼓あぶる夏の火桶やほとゝぎす
(明治三十五年の作だが書は大正期)
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三世のほとけ皆座にあれば寒からず(大正二年)
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水仙を挿ミし日より霙れけり(大正四年)
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宿直して暁寒し春の雪 (色紙)
(明治三十二年の作だが書は大正末から昭和初期)
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東山静に羽子の舞ひ落ちぬ(昭和二年)
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炎天の空美しや高野山(昭和五年)
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古椿こゝだく落て齢哉
(大正十五年の作だが書は昭和十年代)
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魚鼈居る水を踏まへて水馬(昭和十年)
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此松の下に佇めば露の我
(大正六年の作だが書は昭和十年代)
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石に腰暫くかけて冷めたくて(昭和十九年)
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濃紅葉に涙せき来るいかにせん(昭和二十一年)
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父を恋ふ心小春の日に似たる(昭和二十一年)
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海人とても陸こそよけれ桃の花(昭和二十三年)
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何事も落葉降り積む如くにて(昭和二十四年)
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地球一万余回転冬日にこにこ(昭和二十九年)
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虚子の書の変遷
短冊と色紙
明治二十年代の若書きから昭和三十年代の最晩年まで
虚子の書は、明治期の若書き、守旧派として俳壇復帰した大正期、「花鳥諷詠」を唱えた昭和初期から二十年頃、昭和三十年頃の晩年期の四期に分けることができる。
明治・大正期は酔書かと間違える程伸びやかな太書きの書線が多く、文字の大きさも大きな字と小さな字の落差が激しい。一行では納まり切れず、二行書きであることもままある。特に俳壇復帰を果たした大正期は特徴のある筆遣いで個性を出している。
また、大正末期から昭和二十年頃までの書は、統一感を大切にしながら、墨色の潤渇や筆の太細の変化に富んだ流麗な筆勢に特色がある。
さらに晩年は凝縮された小粒な字が多く、行間を生かした自然な筆致を見ることができる。
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