「ホトトギス」一三〇〇号記念展



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虚子・年尾・汀子 色紙





「秋の蚊の灯より下り来し軽さ哉 年尾」
(昭和十二年)

「お遍路の静に去つて行く桜 年尾」(昭和十九年)
《裏書》
此句私の好きな句です。
自分の句云ふのはをかしい
のですが、之は土佐の国分寺
で作った句です。丁度年
老いた二人の遍路が、そこの
枝垂桜の枝に手を触れて
名残惜しげに去って行きました。
それを思ひ出しつゝ。 年尾記





「秋草の野にある心活けられし 汀子」
(昭和五十年)
「コスモスの色の分れ目通れさう 汀子」
(昭和四十九年)


虚子・年尾・汀子 短冊





「この間逢ひしばかりに去年今年 年尾」
(昭和二十六年)
「破魔矢うけし第一番の男かな 年尾」
「かるたとる手がすばしこく美しく 年尾」
(昭和十三年)
「野遊の心足らへり雲とあり 年尾」
(昭和十三年)
「一つ長き夜の藤房をまのあたり 年尾」
(昭和十一年)





「黒潮へ傾き椿林かな 年尾」
(昭和二十年)
「落ちて来し木の実に打たれをかしけれ 年尾」
(昭和十年)
「炭斗の古きひさごに絵かきあり 年尾」
(昭和十三年)
「わが橇の馬が大きく町かくす 年尾」
(昭和十三年)
「遠き家の氷柱落ちたる光かな 年尾」
(大正九年)





「心の灯ともしつゞけて去年今年 汀子」
(昭和五十六年)
「平凡を大切に生き去年今年 汀子」
(昭和五十一年)
「春らしき色といふより好きな色 汀子」
(昭和四十九年)
「さゆらぎてさゆらぎて花心かな 汀子」
(平成八年)
「風きれい赤き薔薇にふるゝとき 汀子」
(昭和四十年)
「五月晴れとはようやくに今日のこと 汀子」
(昭和二十九年)
「緑蔭の広さは人の散る広さ 汀子」
(昭和四十八年)





「紫陽花の色にはじまる子の日誌 汀子」
(昭和三十九年)
「長男と競ひ泳ぎて負けまじく 汀子」
(昭和四十二年)
「夕焼のはかなきことも美しく 汀子」
(昭和二十九年)
「阿波踊らしく踊れてをらずとも 汀子」
(昭和五十三年)
「月の波消え月のなみ生れつゝ 汀子」
(昭和二十七年)
「瀬の音のいつか時雨るゝ音ならし 汀子」
(昭和四十八年)
「見る者も見らるゝ猿も寒さうに 汀子」
(昭和四十八年)

 

 


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