虚子記念文学館投句特選句 平成31年ー令和元年






−−2019/令和元年12月−−

【特選 10句】

風韻の交叉してゐる冬木立

岡山

岩崎正子

湖西線水面に映ゆる干大根

兵庫

高田菲路

冬の月大津皇子の山照らす

兵庫

三村純也

庭の四季愛できし館や納め句座

兵庫

山西商平

一画は落葉のままや館の庭

新潟

安原 葉

日向ぼこしてゐるやうな談話室

石川

辰巳葉流

踏んでゆく落葉の音の又変る

大阪

多田羅初美

日矢に紅掲げて館の寒椿

大阪

杉山千恵子

暇さうに見られ八十路の師走人

兵庫

内田泰代

冬の星より生れ出でし吐息とも

鳥取

前田 千

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−−2019/令和元年11月−−

【特選 10句】

記念樹の枯葉震へてをりし晴

新潟

安原 葉

よぢ登る一トところあり紅葉狩

兵庫

三村純也

地に集ふ光の精や銀杏散る

大阪

阪井邦裕

生くるとは数多の別れ冬銀河

栃木

斎藤 光

落日を掃き寄せ銀杏落葉かな

兵庫

中村恵美

鼻の奥ぴしりと痛し冬に入る

兵庫

小杉伸一路

小品にこその丹精菊花展

香川

三宅久美子

連山を近づけてゆく時雨虹

鳥取

前田 千

あなどりて走れば時雨ついて来し

兵庫

金田八江子

落葉して明るき日向作りゆく

兵庫

清瀬 環

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−−2019/令和元年10月−−

【特選 10句】

容赦なき荒ぶる神や秋出水

兵庫

山西商平

一筋の風浮き沈み秋の蝶

兵庫

吉村玲子

さわやかや喃語零るるミサであり

兵庫

涌羅由美

どこまでも続く草原鰯雲

大阪

綿谷千世子

角切や御守胸に縫ひつけて

北海道

吉岡簫子

快晴の虚子館の空小鳥来る

新潟

安原 葉

色褪せぬ虚子の遺墨にある秋思

兵庫

勝田展子

庭隅のこんな所に初紅葉

奈良

好川忠延

嬰児の笑顔繋いで爽やかに

兵庫

奥田好子

筆談の鉛筆の音天の川

兵庫

藤井隆人

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−−2019/令和元年9月−−

【特選 10句】

さはやかや芋銭飄逸虚子洒脱

兵庫

山西商平

未知の友会釈や館の秋灯下

新潟

安原 葉

もう少し青空見たし穴まどひ

兵庫

山田佳乃

人なべて詩人となれる良夜かな

滋賀

石川多歌司

濡れ色を足し七草の雨有情

大阪

石橋玲子

新しきことの切なき盆提灯

大阪

加藤あや

師の庭の天まで届く松手入

兵庫

大西美知子

デュエットがオーケストラに虫の秋

大阪

多田羅紀子

冷やかな医師と笑顔の看護師と

大阪

西尾浩子

鈴虫の餌も添へられて届きけり

滋賀

尾崎恵子

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−−2019/令和元年8月−−

【特選 10句】

師の机椅子にも触れて露けしや

新潟

安原 葉

偲ぶもの又買ひ足して草の市

大阪

石橋玲子

初嵐一本松に韻(ひび)きけり

兵庫

三村純也

俳磚に移ろふ葉陰風は秋

鳥取

椋 誠一朗

ホ句の道極める決意夏行果つ

岐阜

花川和久

新涼や万象なべて甦る

滋賀

石川多歌司

水音を残暑を凌ぐ術として

兵庫

山西商平

館涼し虚子の机と金庫来て

兵庫

玉手のり子

雨宿りして新涼を帰りけり

奈良

好川忠延

燈下親し虚子の机の古き傷

香川

三宅久美子

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−−2019/令和元年7月−−

【特選 10句】

師の机椅子も納まり館涼し

新潟

安原 葉

実家とは昼寝をさせてやるところ

兵庫

三村純也

少年は野球大好き夾竹桃

奈良

好川忠延

合歓の花叶はぬ三瓶恋ふ心

兵庫

内田泰代

黴の香の明治の資料寂と積む

兵庫

橋本絹子

待ち合はす涼しき風の芯に館

岡山

岩崎正子

館涼し虚子の息づく机かな

兵庫

清瀬 環

大夕焼褪めて現に戻る街

香川

三宅久美子

会を守る涼しき矜持ありにけり

兵庫

勝田展子

サイダーの泡や彼待つカフェテラス

大阪

多田羅紀子

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−−2019/令和元年6月−−

【特選 10句】

朝の日の未央柳に金となる

岡山

伴 明子

雨の日に穿く白靴は別にあり

大阪

多田羅初美

はじめより藍深かりし四葩かな

兵庫

三村純也

花合歓にふと三瓶へと馳すこころ

福岡

島原仁代

ついり呼ぶ空の悒鬱ありにけり

兵庫

奥田好子

水音の深く窪みて梅雨に入る

香川

原 道子

身を投げんばかりヨットの向き変ふる

大阪

加藤あや

ひと漕ぎで百メートルの蜈蚣力

兵庫

伊藤秀子

あした着る服に薫風通しをり

兵庫

福間笙子

形代に託す穢れの多きこと

三重

池本準一

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−−2019/令和元年5月−−

【特選 10句】

遥か来し虚子館の庭風薫る

新潟

安原 葉

春灯や遺せしもののまたひとつ

兵庫

進藤剛至

新緑の庭を仕上げし水の音

兵庫

岩水ひとみ

末つ子の定位置祖父のセルの膝

兵庫

涌羅由美

日を抱き光紡ぎて梅は実に

兵庫

清瀬 環

虚子館へ学びを繋ぎ若葉風

岡山

石井宏幸

惑ふこと断つべく今朝の更衣

滋賀

石川多歌司

青葉して人住まぬ村蔽ひけり

奈良

好川忠延

虚子館はわたしのまほら新樹晴

石川

辰巳葉流

休日に車で寝てた蝉丸忌

大阪

落合恭也
(青少年)

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−−2019/平成31年4月−−

【特選 10句】

夜桜の闇の湿つて来りけり

兵庫

三村純也

漕いで行く先に希望や春の海

兵庫

小杉伸一路

俳磚に風のインクや風光る

兵庫

奥田好子

虚子館を訪ね虚子忌の心とす

大阪

林 曜子

小流も池も名を持つ庭うらら

京都

山崎貴子

皆花に呼ばれるやうに歩す芦屋

石川

辰巳葉流

うす紅を終として黄桜の散る

兵庫

山西商平

春昼や記念樹空へ伸び伸びと

新潟

安原 葉

春雨といふ安らぎに学ぶ虚子

兵庫

武本敬子

司会者の背の俳磚風光る

兵庫

木村オサム

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−−平成31年3月−−

【特選 10句】

初雷の近づきもせず鳴り終る

兵庫

三村純也

子の声のかさなり合へる春夕

兵庫

進藤剛至

初花も師の受賞祝ぐ邸の庭

新潟

安原 葉

水音の囃すうすずみ桜咲く

兵庫

大谷千華

雛の間一人遊びの声漏るる

兵庫

塩見成子

俳磚へ染める階段落椿

大阪

中野美栄子

先頭の右へ旋回雁帰る

兵庫

北井真有美

川音と風が芽柳育てゆく

大阪

西尾浩子

虚子館の未来へ椿明りかな

京都

杉森大介

雪ダルマみんなでつくってあそぼうね

神奈川

畑 のえる
(青少年)

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−−平成31年2月−−

【特選 10句】

観音の指を零るる初音かな

大阪

奥村つよし

立春と聞いて力を抜くまじく

兵庫

三村純也

梅が香を攫ふ風引き戻す風

東京

荒川ともゑ

記念樹や早春の日を浴びて伸び

新潟

安原 葉

日の喝采風の喝采花ミモザ

大阪

加藤あや

汀子邸一歩白梅そして紅

京都

宮本幸子

一声に誘はれ初音続けざま

福岡

介弘紀子

梅が香と気づきたるより一行詩

岡山

岩崎正子

ひと時雨もうひと時雨して日差

兵庫

進藤剛至

へやに行きカイロはがしてねこだっこ

東京

しんどうふうか
(青少年)

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−−平成31年1月−−

【特選 10句】

水音を紡ぎゆく庭春を待つ

兵庫

清瀬 環

目指しゆく恵方自づと虚子の道

大阪

石橋玲子

俳磚の一句一句の名に淑気

大阪

徳岡美祢子

初夢も儚きものの一つかな

兵庫

小杉伸一路

俳磚の角度にありし初明り

広島

広川良子

咲く力咲かせる思ひ寒牡丹

岐阜

花川和久

枕辺に雪の匂ひの重なりぬ

鳥取

前田 千

喪心のありて静かな寝正月

京都

山崎貴子

晩学の吾に探梅てふ風雅

大阪

田邉育子

早春の光を返す忘れ潮

大阪

中住笛美

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