虚子記念文学館投句特選句 平成30年
−−平成30年11月−−
【特選 10句】
風変り押し移り来る鴨の陣
兵庫
三村純也
庭の客北国人は著ぶくれて
新潟
安原 葉
対岸は大きな日向冬に入る
兵庫
二瓶美奈子
小春日のやうな字面の虚子の文字
兵庫
大谷千華
雲低く湖は時雨れず比良颪
滋賀
石川多歌司
手を入れぬ庭を笹子に明け渡す
兵庫
田村惠津子
冬紅葉声なき声を聞く山湖
兵庫
岩水ひとみ
冬紅葉災禍の多き年なりし
兵庫
小杉伸一路
大綿の乱舞終るやすつと消え
兵庫
福間笙子
木の葉髪とて恋心詩ごころ
兵庫
玉手のり子
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−−平成30年10月−−
【特選 10句】
鰯雲らしく整ひ来たりけり
神奈川
藤木和子
秋晴を無駄に過ごしてしまひたる
兵庫
三村純也
霧咽ぶ六甲どこまでも白し
鳥取
前田 千
コスモスの三分咲とは浮くやうに
兵庫
吉村玲子
小鳥来て飛びたる影を写す石
大阪
辻田あづき
水音を奏でる邸の秋高し
兵庫
山際ヨネ子
年尾忌や師事せし祖父も遠き人
兵庫
池田奈美子
爽やかや海からも山からも風
石川
辰巳葉流
爽やかや母にもらひし服を着て
兵庫
進藤剛至
順三忌偲ぶよすがや薄紅葉
滋賀
堀田 民
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−−平成30年9月−−
【特選 10句】
潮の香と青さ運べる竹の春
福岡
島原仁代
記念樹や枝先はやもうすもみぢ
新潟
安原 葉
昃りても風のコスモス暗さなし
兵庫
三村純也
梅雨明けて雲に軽さのありにけり
大阪
綿谷千世子
風に彩混ざりて花野らしくなる
兵庫
玉手のり子
草の花野辺の送りを終へし目に
兵庫
小杉伸一路
露一つ零れ宇宙の生まれたる
大阪
奥村つよし
ちちははの小さく立てる墓参かな
兵庫
進藤剛至
少しづつ秋めくことを信じたく
京都
山崎貴子
月を見て泣くは狼のみならず
京都
奥田まゆみ
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−−平成30年8月−−
【特選 10句】
手花火に家族の歴史ありにけり
兵庫
小杉伸一路
踊り抜く覚悟の髪を束ねけり
兵庫
三村純也
影に翳辷り込みたる晩夏かな
兵庫
奥田好子
芦屋川海へとつづく草いきれ
兵庫
池田雅かず
平田町くの字に曲る松涼し
兵庫
藤井啓子
邸の庭へと新涼の扉押す
兵庫
清瀬 環
自転車のまた通ひたる夜釣かな
兵庫
進藤剛至
半夏生かしら館の裏庭に
新潟
大河内冬華(青少年)
この庭の暦日語る蝉時雨
兵庫
岩水ひとみ
逆縁の喪服姿の涼しさよ
兵庫
ほりもとちか
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−−平成30年7月−−
【特選 10句】
幸せを配り疲れて天道虫
兵庫
吉村玲子
炎帝が空の四隅を押し広ぐ
岡山
石井宏幸
雨粒の固き音より大夕立
兵庫
二瓶美奈子
海の日や七つの海をかけし文
兵庫
森岡喜惠子
たをやかな風あやさんの青芒
兵庫
大谷千華
積み置きて夏座布団の薄さかな
京都
山崎貴子
投げ上げしかなぶん月へ帰りけり
兵庫
小杉伸一路
あをあをと雨降る庭や半夏生
兵庫
田中奈々
暑き日も虚子館を訪ひ学ぶ人
新潟
安原 葉
星涼し三瓶は夜の深き国
兵庫
長谷川朝子
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−−平成30年6月−−
【特選 10句】
咲き初めの花合歓揺るる風やさし
岡山
大槻秋女
老鶯の声に老などなかりけり
奈良
好川忠延
菖蒲園むらさきにして風渡る
大阪
八木 徹
昼灯す梅雨の虚子館みな静か
新潟
安原 葉
芦屋川今日はあかるくさみだるる
兵庫
山西商平
記念樹の高さに五月闇生れず
愛知
村瀬みさを
親燕上下左右に過る雲
東京
荒川ともゑ
丁寧に水打つてあるしじまかな
京都
宮本幸子
雨昏みはぢいて未央柳かな
香川
三好ようこ
ふと二人黙りゐるときさくらんぼ
兵庫
永沢達明
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−−平成30年5月−−
【特選 10句】
ひと色といふ潔きかきつばた
京都
山崎貴子
潮風と川風の街露涼し
石川
辰巳葉流
庭中が水音に濡れ新樹晴
兵庫
上原康子
計らずも美穂女忌となる業平忌
大阪
石橋玲子
薫風や着きて降り立つ館の庭
新潟
安原 葉
あやめ活け句座むらさきの風の生れ
兵庫
柄川武子
山寺の和尚秘蔵の牡丹かな
兵庫
小杉伸一路
マロニエの花に青空透き通る
岡山
伴 明子
明日からの仕事心に夏に入る
大阪
多田羅紀子
夏めきぬ木洩れ日の蔭濃くなりし
奈良
好川忠延
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−−平成30年4月−−
【特選 10句】
整列の中の情熱チューリップ
岡山
伴 明子
忌を修す花人たちへ吾もまた
兵庫
中村恵美
菫すみれ風もすみれになるやうに
兵庫
進藤剛至
虚子館の寂白椿紅椿
兵庫
田中節夫
花万朶虚子のみもとに遊ばれよ
兵庫
田村惠津子
囀や天に届いて雲動く
滋賀
石川多歌司
木蓮の祈りを解きゆく真白
兵庫
池田雅かず
ボール投げ声も投げ合ひ青き踏む
石川
辰巳葉流
行春のひとり占めして資料室
兵庫
橋本絹子
遠山の空の濁りも杉の花
兵庫
三木雅子
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−−平成30年3月−−
【特選 10句】
遅れゐし記念樹急かす木の芽風
新潟
安原 葉
春雨を加へ川音饒舌に
兵庫
山谷彰子
一邸のねびまさりゆく古雛
滋賀
野瀬章子
差し伸べし指の隙間の余寒かな
兵庫
山田佳乃
仰ぐたび春めく思ひ館の空
香川
三宅久美子
春泥の足首つかみさうに待つ
石川
山井きなこ
初花や今日の日差しを淋めず
大阪
友井正明
奮ひ起つやうに六甲山笑ふ
石川
辰巳昌彦
花を去りだんだん花となる心
兵庫
進藤剛至
鳥帰る命の他は携へず
奈良
松田吉上
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−−平成30年2月−−
【特選 10句】
草萌ゆるはやこまごまと館の庭
新潟
安原 葉
木の芽風さへも旧家のたたづまひ
千葉
大木さつき
早春の尖りし風に日差しあり
鳥取
椋 則子
春兆すもの怯ませてゐる大気
東京
荒川ともゑ
撫牛の鼻一杯に梅香る
兵庫
大西美知子
鯉動くところより水温み初む
福岡
介弘紀子
春寒を解くときめきの金メダル
兵庫
清瀬 環
紅梅に触れくれなゐの雨となる
兵庫
池田雅かず
虚子館の神へ仏へ年の豆
大阪
林 曜子
宅配便春立つこの日指定して
兵庫
永沢達明
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−−平成30年1月−−
【特選 10句】
前うしろ向かせ春著の人囲み
兵庫
千原叡子
記念樹や光る冬芽の雨雫
新潟
安原 葉
日脚伸ぶ頃に嫁いできてくれて
兵庫
笹尾玲花
薄氷の水の記憶を取り戻す
岡山
池田純子
鎮魂の山茶花白し震災碑
大阪
大野呂愛子
餅花の紅とは触れてみたきもの
兵庫
小杉伸一路
箸紙のくたびれて来し三日かな
奈良
好川忠延
川涸れて浜風町の海光る
群馬
木暮陶句郎
初旅や齟齬を乗り継ぎ句会へと
徳島
奥村 里
息少し止めて頬寄す寒牡丹
兵庫
雪岡久代
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