虚子記念文学館投句特選句 平成29年
−−平成29年11月−−
【特選 10句】
日に風に揺れ記念樹の木の葉かな
新潟
安原 葉
秋惜む歩をためらへば鳩寄り来
兵庫
永沢達明
石蕗の咲く大会待たず逝かれけり
兵庫
池田雅かず
秋天に鳴る老練の空鋏
兵庫
涌羅由美
雪安居尖る山気の問答に
大阪
阪井邦裕
焚くこともならぬ落葉を掃きにけり
兵庫
三村純也
墨色の幹に一輪返り花
兵庫
倉岡博子
虚子館の水音に咲く石蕗の花
兵庫
玉手のり子
文化の日虚子が清と知る日哉
兵庫
三木真帆
流されて流れて揺れて浮寝鳥 兵庫 山西商平
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−−平成29年10月−−
【特選 10句】
色鳥の影が走つてをりにけり
兵庫
大石 勲
啄木鳥や闇の扉を開きをり
大阪
辻 昌子
秋の日のこぼれて庭の石光る
大阪
辻田あづき
闇のなか光と影に秋の声
兵庫
片山早苗
秋の蝶静かに曲がる松の角
兵庫
岸川佐江
湖冷えと言ひ露寒と言ひ直す
滋賀
石川多歌司
記念樹の美しき黄葉を記念とす
新潟
安原 葉
瓢の実の中に棲みたるもののこと
大阪
多田羅紀子
記念樹の黄葉に雨を寄せぬ館
兵庫
英賀美千代
秋灯下聖堂の端に跪き 兵庫 田村惠津子
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−−平成29年9月−−
【特選 10句】
言の葉の綾に濃淡獺祭忌
兵庫
岸田 健
透きとほる光の調べ初月夜
兵庫
涌羅由美
萩に着き萩に溺れて萩を辞す
京都
算 双子
秋の蝉この世の空をこぼれ落つ
大阪
奥村つよし
季題みな胃の腑に納め館の秋
大阪
林 曜子
文机に一書の翳り茶立虫
兵庫
中村恵美
春の灯や鉄路の継ぎ目拾ふ音
大阪
沖田明彦
秋草の真中を流る芦屋川
岡山
虫明かつえ
虚子揮毫子規逝くやの句秋灯下
岡山
綾野静惠
手鏡を伏せて秋思を絶ちにけり 兵庫 笹尾玲花
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−−平成29年8月−−
【特選 10句】
平田町松の片陰拾ひゆく
兵庫
藤井啓子
蝉時雨水音を消す芦屋川
鳥取
椋 則子
目の合うて夜店のひよこ連れ帰る
兵庫
笹尾玲花
新涼の畳の硬さ知りにけり
兵庫
山岸正子
今朝の秋吾の俳磚に会ひにけり
大阪
辻田あづき
俳磚に垂れかかり来て葛の花
兵庫
三村純也
今日からはいつもの道も夏休み
大阪
阪井邦裕
盆休なれど虚子館扉開く
新潟
安原 葉
空蝉に生きた証の背中かな
兵庫
山口弘子
高原の闇と静寂と星月夜
兵庫
伊藤秀子
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−−平成29年7月−−
【特選 10句】
登山帽ふり風自在雲自在
兵庫
和田華凜
館の庭統べる夏木に育ちけり
新潟
安原 葉
小さき手を握りて蛍見せ来たる
兵庫
永沢達明
五月晴雲散らばつてゆきにけり
東京
荒川ともゑ
風畳み切れざる庭の夏木立
香川
大山孝子
欲のなき静かな暮し梅を干す
滋賀
石川多歌司
白南風や海より晴れて来し芦屋
香川
真鍋孝子
年尾像涼しき風を回しくれ
石川
辰巳葉流
満天の星へ消さうよキャンプの灯
大阪
河辺さち子
かき氷口にする日が増えていく
兵庫
いちごシロップ
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−−平成29年6月−−
【特選 10句】
万緑の端山の下の年尾展
兵庫
田中節夫
晩学の窓に寄り来る灯虫かな
滋賀
石川多歌司
展示室照明くらき梅雨入かな
兵庫
三村純也
果報待つ暗き幸せ蟻地獄
滋賀
尾崎恵子
薫風や炎の色の司祭服
兵庫
涌羅由美
万緑の風に佇み詩を紡ぐ
香川
原 道子
年輪の緑蔭ひろげ桂の木
岡山
江本節子
押し出され来し黒雲や梅雨近し
東京
荒川ともゑ
緑蔭に沈み庭師の園手入
兵庫
川村ひろみ
ふんばりぬ牛のひづめや賀茂祭
滋賀
小寺美紀
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−−平成29年5月−−
【特選 10句】
虚子館へ葉桜の蔭拾ひつつ
兵庫
藤井啓子
席を詰め膳を急かされ祭宿
大阪
石橋玲子
初夏の館昼は玄関開け放ち
新潟
安原 葉
広げたる桂の影に解く薄暑
兵庫
清瀬 環
昨日パリ今日は虚子館春の人
兵庫
三村純也
夏近し潮の香もくる芦屋川
群馬
木暮陶句郎
箱庭を風が仕上げて行きにけり
兵庫
吉村玲子
パンを焼く匂ひに並ぶ街薄暑
兵庫
入谷千惠子
俳磚の藍に触れつつ夏の蝶
東京
荒川ともゑ
飲みなれし古茶飲みなれし湯呑かな
大阪
山戸暁子
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−−平成29年4月−−
【特選 10句】
碧空を揺らす記念樹木の芽風
新潟
安原 葉
風光り瀬はサラサラとさらさらと
兵庫
山西商平
薄墨の万朶の花に重さなく
岡山
大槻秋女
里遠く亀鳴く異界闇深し
滋賀
石川多歌司
オリーブの風もろともに剪定す
香川
高橋和子
春愁や役職のまた一つ増え
兵庫
三村純也
赤児泣く声ある我が家うららかに
京都
山崎貴子
初花にもう充分な日の当る
大阪
辻田あづき
日に酔うて牡丹の香におぼれけり
兵庫
篠原弘子
ゆきとけて川あそびする子どもたち
兵庫
畑ゆうき(青少年)
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−−平成29年3月−−
【特選 10句】
全開の青空満開のミモザ
岡山
伴 明子
震災の頬傷のある雛かな
兵庫
三村純也
落つるより正座つづける椿かな
兵庫
大石 勲
掌に載せてみる虚子館の落椿
新潟
安原 葉
談話室黙の満員暖かし
滋賀
堀田 民
水音を聴けば初音となりにけり
兵庫
岸川佐江
壷に余る山の消息句座の春
兵庫
柄川武子
引くものに引つぱられもし地虫出づ
石川
山井きなこ
内裏雛確と涙を見しと祖母
兵庫
深野まり子
水音の三つの調べ水温む
大阪
友井正明
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−−平成29年2月−−
【特選 10句】
虚子館の静寂を解く濃紅梅
兵庫
黒田千賀子
薄氷の花と散りゆく波間かな
福岡
介弘紀子
虚子館に花絶ゆるなき二月かな
兵庫
三村純也
立春や空の端まで明るくて
東京
荒川ともゑ
水音を要としたる春の庭
兵庫
田村惠津子
紅梅の散り水音にたゆたへ
岡山
三木瑞恵
虚子館へ瀬音に春を聴きながら
兵庫
山西商平
寒明や水音スキップしてをりぬ
兵庫
西村正子
燦々と春日は庭に記念樹に
新潟
安原 葉
記念日の二月のドアの軽やかさ
兵庫
深尾真理子
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−−平成29年1月−−
【特選 10句】
庭の芯日の芯となる寒牡丹
岡山
伴 明子
師の庭のフレームの四季ものがたり
兵庫
山西商平
寒牡丹庭隅豪華なりし日々
新潟
安原 葉
着ぶくれて来しには訳のありにけり
兵庫
三村純也
一輪の臘梅よりの館の四季
香川
三宅久美子
日の差せば水色の町冬の朝
兵庫
山田佳乃
逆さ独楽爪立ちてより色生るる
兵庫
中村恵美
幸せは掌の中初詣
兵庫
河野ひろみ
嬰児を秤に乗せる初湯かな
兵庫
笹尾玲子
碑は二十二年目悴める
兵庫
山村千惠子
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