虚子記念文学館投句特選句 平成29年






−−平成29年12月−−

【特選 10句】

六月経て訪ひ得し館や冬晴るる

香川

三宅久美子

この庭の風韻の嵩とは落葉

大阪

石橋玲子

冬菊を生けてひとつになる香り

兵庫

山田佳乃

記念樹の枯木に日差し燦々と

新潟

安原 葉

風に耐へ冬芽の明日へ向く力

大阪

杉山千恵子

確と立つ桂の冬芽見て館へ

大阪

徳岡美祢子

あのあたり山の近しと思ふ火事

兵庫

高橋純子

虚子館に渾身の色冬紅葉

京都

宮本美恵子

呆けまじく又寒さにも負けまじく

兵庫

吉田清秋

カレー屋にいつもの君の亡き師走 大阪 八木 徹

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−−平成29年11月−−

【特選 10句】

日に風に揺れ記念樹の木の葉かな

新潟

安原 葉

秋惜む歩をためらへば鳩寄り来

兵庫

永沢達明

石蕗の咲く大会待たず逝かれけり

兵庫

池田雅かず

秋天に鳴る老練の空鋏

兵庫

涌羅由美

雪安居尖る山気の問答に

大阪

阪井邦裕

焚くこともならぬ落葉を掃きにけり

兵庫

三村純也

墨色の幹に一輪返り花

兵庫

倉岡博子

虚子館の水音に咲く石蕗の花

兵庫

玉手のり子

文化の日虚子が清と知る日哉

兵庫

三木真帆

流されて流れて揺れて浮寝鳥 兵庫 山西商平

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−−平成29年10月−−

【特選 10句】

色鳥の影が走つてをりにけり

兵庫

大石 勲

啄木鳥や闇の扉を開きをり

大阪

辻 昌子

秋の日のこぼれて庭の石光る

大阪

辻田あづき

闇のなか光と影に秋の声

兵庫

片山早苗

秋の蝶静かに曲がる松の角

兵庫

岸川佐江

湖冷えと言ひ露寒と言ひ直す

滋賀

石川多歌司

記念樹の美しき黄葉を記念とす

新潟

安原 葉

瓢の実の中に棲みたるもののこと

大阪

多田羅紀子

記念樹の黄葉に雨を寄せぬ館

兵庫

英賀美千代

秋灯下聖堂の端に跪き 兵庫 田村惠津子

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−−平成29年9月−−

【特選 10句】

言の葉の綾に濃淡獺祭忌

兵庫

岸田 健

透きとほる光の調べ初月夜

兵庫

涌羅由美

萩に着き萩に溺れて萩を辞す

京都

算 双子

秋の蝉この世の空をこぼれ落つ

大阪

奥村つよし

季題みな胃の腑に納め館の秋

大阪

林 曜子

文机に一書の翳り茶立虫

兵庫

中村恵美

春の灯や鉄路の継ぎ目拾ふ音

大阪

沖田明彦

秋草の真中を流る芦屋川

岡山

虫明かつえ

虚子揮毫子規逝くやの句秋灯下

岡山

綾野静惠

手鏡を伏せて秋思を絶ちにけり 兵庫 笹尾玲花

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−−平成29年8月−−

【特選 10句】

平田町松の片陰拾ひゆく

兵庫

藤井啓子

蝉時雨水音を消す芦屋川

鳥取

椋 則子

目の合うて夜店のひよこ連れ帰る

兵庫

笹尾玲花

新涼の畳の硬さ知りにけり

兵庫

山岸正子

今朝の秋吾の俳磚に会ひにけり

大阪

辻田あづき

俳磚に垂れかかり来て葛の花

兵庫

三村純也

今日からはいつもの道も夏休み

大阪

阪井邦裕

盆休なれど虚子館扉開く

新潟

安原 葉

空蝉に生きた証の背中かな

兵庫

山口弘子

高原の闇と静寂と星月夜

兵庫

伊藤秀子

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−−平成29年7月−−

【特選 10句】

登山帽ふり風自在雲自在

兵庫

和田華凜

館の庭統べる夏木に育ちけり

新潟

安原 葉

小さき手を握りて蛍見せ来たる

兵庫

永沢達明

五月晴雲散らばつてゆきにけり

東京

荒川ともゑ

風畳み切れざる庭の夏木立

香川

大山孝子

欲のなき静かな暮し梅を干す

滋賀

石川多歌司

白南風や海より晴れて来し芦屋

香川

真鍋孝子

年尾像涼しき風を回しくれ

石川

辰巳葉流

満天の星へ消さうよキャンプの灯

大阪

河辺さち子

かき氷口にする日が増えていく

兵庫

いちごシロップ

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−−平成29年6月−−

【特選 10句】

万緑の端山の下の年尾展

兵庫

田中節夫

晩学の窓に寄り来る灯虫かな

滋賀

石川多歌司

展示室照明くらき梅雨入かな

兵庫

三村純也

果報待つ暗き幸せ蟻地獄

滋賀

尾崎恵子

薫風や炎の色の司祭服

兵庫

涌羅由美

万緑の風に佇み詩を紡ぐ

香川

原 道子

年輪の緑蔭ひろげ桂の木

岡山

江本節子

押し出され来し黒雲や梅雨近し

東京

荒川ともゑ

緑蔭に沈み庭師の園手入

兵庫

川村ひろみ

ふんばりぬ牛のひづめや賀茂祭

滋賀

小寺美紀

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−−平成29年5月−−

【特選 10句】

虚子館へ葉桜の蔭拾ひつつ

兵庫

藤井啓子

席を詰め膳を急かされ祭宿

大阪

石橋玲子

初夏の館昼は玄関開け放ち

新潟

安原 葉

広げたる桂の影に解く薄暑

兵庫

清瀬 環

昨日パリ今日は虚子館春の人

兵庫

三村純也

夏近し潮の香もくる芦屋川

群馬

木暮陶句郎

箱庭を風が仕上げて行きにけり

兵庫

吉村玲子

パンを焼く匂ひに並ぶ街薄暑

兵庫

入谷千惠子

俳磚の藍に触れつつ夏の蝶

東京

荒川ともゑ

飲みなれし古茶飲みなれし湯呑かな

大阪

山戸暁子

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−−平成29年4月−−

【特選 10句】

碧空を揺らす記念樹木の芽風

新潟

安原 葉

風光り瀬はサラサラとさらさらと

兵庫

山西商平

薄墨の万朶の花に重さなく

岡山

大槻秋女

里遠く亀鳴く異界闇深し

滋賀

石川多歌司

オリーブの風もろともに剪定す

香川

高橋和子

春愁や役職のまた一つ増え

兵庫

三村純也

赤児泣く声ある我が家うららかに

京都

山崎貴子

初花にもう充分な日の当る

大阪

辻田あづき

日に酔うて牡丹の香におぼれけり

兵庫

篠原弘子

ゆきとけて川あそびする子どもたち

兵庫

畑ゆうき(青少年)

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−−平成29年3月−−

【特選 10句】

全開の青空満開のミモザ

岡山

伴 明子

震災の頬傷のある雛かな

兵庫

三村純也

落つるより正座つづける椿かな

兵庫

大石 勲

掌に載せてみる虚子館の落椿

新潟

安原 葉

談話室黙の満員暖かし

滋賀

堀田 民

水音を聴けば初音となりにけり

兵庫

岸川佐江

壷に余る山の消息句座の春

兵庫

柄川武子

引くものに引つぱられもし地虫出づ

石川

山井きなこ

内裏雛確と涙を見しと祖母

兵庫

深野まり子

水音の三つの調べ水温む

大阪

友井正明

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−−平成29年2月−−

【特選 10句】

虚子館の静寂を解く濃紅梅

兵庫

黒田千賀子

薄氷の花と散りゆく波間かな

福岡

介弘紀子

虚子館に花絶ゆるなき二月かな

兵庫

三村純也

立春や空の端まで明るくて

東京

荒川ともゑ

水音を要としたる春の庭

兵庫

田村惠津子

紅梅の散り水音にたゆたへ

岡山

三木瑞恵

虚子館へ瀬音に春を聴きながら

兵庫

山西商平

寒明や水音スキップしてをりぬ

兵庫

西村正子

燦々と春日は庭に記念樹に

新潟

安原 葉

記念日の二月のドアの軽やかさ

兵庫

深尾真理子

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−−平成29年1月−−

【特選 10句】

庭の芯日の芯となる寒牡丹

岡山

伴 明子

師の庭のフレームの四季ものがたり

兵庫

山西商平

寒牡丹庭隅豪華なりし日々

新潟

安原 葉

着ぶくれて来しには訳のありにけり

兵庫

三村純也

一輪の臘梅よりの館の四季

香川

三宅久美子

日の差せば水色の町冬の朝

兵庫

山田佳乃

逆さ独楽爪立ちてより色生るる

兵庫

中村恵美

幸せは掌の中初詣

兵庫

河野ひろみ

嬰児を秤に乗せる初湯かな

兵庫

笹尾玲子

碑は二十二年目悴める

兵庫

山村千惠子

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