虚子記念文学館投句特選句 平成28年






−−平成28年12月−−

【特選 10句】

虚子記念館散紅葉散黄葉

兵庫

三村純也

碧天に時に震へもして木の葉

新潟

安原 葉

マロニエの大きな冬芽雲つかむ

兵庫

上原康子

数へ日と別の時間にある湯宿

兵庫

山田佳乃

手入れ良き庭の冬ざれとは水音

大阪

生澤瑛子

忙しさと無縁になれぬ師走かな

兵庫

田中節夫

時雨雲乗せて流れの芦屋川

兵庫

平田 惠

落葉踏む音の大きく華奢な人

愛知

村瀬みさを

記念樹の冬木となりて知る高さ

兵庫

玉手のり子

冬ぬくし虚子の想ひを見る書簡

大阪

大野呂愛子

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−−平成28年11月−−

【特選 10句】

試歩伸ばす土手に甲斐あり帰り花

滋賀

石川多歌司

けふは客ぼちぼちといふ館小春

新潟

安原 葉

水涸れて風のみ流る芦屋川

愛媛

中野匡子

濡れ色を足して彩づく冬紅葉

大阪

石橋玲子

芦屋川なびく尾花に招かれて

兵庫

三木その女

山茶花に置き忘れたる庭箒

兵庫

中村恵美

期待せしとほりの桂黄葉かな

兵庫

三村純也

指先の乾び十一月に入る

兵庫

山田佳乃

茶の花の盛りともなき里日和

兵庫

清瀬 環

俳磚の紺にしみ入る秋の声

兵庫

高杉靖子

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−−平成28年10月−−

【特選 10句】

俳磚に枝先触れて萩の風

岡山

大槻秋女

深みゆく秋透き通る水の音

大阪

石橋玲子

吉野までたどり着けたる野分かな

兵庫

三村純也

新米の炊ける匂ひも輝ける

兵庫

池田雅かず

拾ひたる桜紅葉の芦屋ぶり

兵庫

辻 桂湖

大綿や己が重みに落ちゆける

岡山

池田純子

秋深めゆく水の音風の音

兵庫

上原康子

やはらかな土少し抱く貝割菜

兵庫

山田佳乃

木犀の濃き香り満つ館の庭

新潟

安原 葉

爽やかに更なる一歩桂の木

兵庫

大西美知子

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−−平成28年9月−−

【特選 10句】

虚子館に着きて寛ぐ秋扇

新潟

安原 葉

考へて答出ぬこと鉦叩

兵庫

三村純也

夜長の灯積んで客船すれ違ふ

兵庫

田村惠津子

俳磚に立ち上がりたる秋日濃し

岡山

石井宏幸

爽やかや特効薬は師の笑顔

東京

荒川ともゑ

闇来るぞ来るぞと告げて蚊食鳥

兵庫

池田雅かず

記念樹の梢は秋風招く色

愛知

佐藤日出満

掃苔や虚子命名の酒供へ

兵庫

山田佳乃

使ふとも仕舞ふともなく秋扇

三重

松岡芳人

鮭のぼる背鰭の川に収まらず

岡山

池田純子

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−−平成28年8月−−

【特選 10句】

夕立来る気配や木々は葉をこぼす

新潟

安原 葉

羅を着て花道に近き席

兵庫

中村恵美

点在の陰秋近き芦屋川

愛媛

中野匡子

旅に来てみんな無口となる銀河

兵庫

池田雅かず

刀豆の大地貫くほど育つ

兵庫

山田佳乃

風の道見上げ佇む秋日傘

大阪

友井正明

木洩れ日のそよぎに紛れ秋の蝶

兵庫

田中節夫

山小屋も宇宙の底や銀河濃し

兵庫

永沢達明

新涼の潮の香と入る文学館

兵庫

橋本絹子

残暑来てまづ水音に濡れてをり

兵庫

清瀬 環

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−−平成28年7月−−

【特選 10句】

梅雨深し桂の葉蔭さへ暗く

兵庫

三村純也

記念樹の幹炎天へなほも伸び

新潟

安原 葉

川幅の残る明るさ蚊食鳥

大阪

加藤あや

梅雨明や六甲青く瀬戸青く

兵庫

玉手のり子

夕焼の帰路の寂しき野道かな

滋賀

石川多歌司

灯涼し里山昏れてゆく静寂

兵庫

清瀬 環

かりそめの白とは蒼し半夏生

大阪

生澤瑛子

庭滝の日の斑をのせてゐる静寂

岡山

大槻秋女

仙人掌の棘に追憶戻り来し

大阪

綿谷千世子

雨後の草の匂ひに夏の蝶

兵庫

児山綸子

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−−平成28年6月−−

【特選 10句】

銀閣寺まで蛍火について行く

兵庫

和田華凛

きらきらと風の過ぎゆく花石榴

兵庫

三村純也

降り立てば待つ記念樹の緑蔭へ

新潟

安原 葉

現の灯抜けてこれより蛍の夜

香川

三宅久美子

句を詠めと館の青梅まろび落つ

鳥取

椋 誠一朗

水打つてより極上の庭の風

石川

辰巳葉流

芦屋川草書のごとく蛇渡る

香川

森本添水

俳磚を磨ぐやに影や花樗

兵庫

高田菲路

離れては又水音へ川とんぼ

香川

肥塚英子

六甲の見ゆる薄暑の橋渡る

熊本

児玉胡餅

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−−平成28年5月−−

【特選 10句】

囀を残し虚子館閉ざす頃

香川

三宅久美子

海抜の標示のつづく街薄暑

高知

橋田憲明

記念樹の月日語れる茂かな

新潟

安原 葉

夏めけるひかりを刻むブラインド

群馬

木暮陶句郎

やうやくに傷癒えてきし花は葉に

大阪

多田羅初美

雨足のもつれてゆきぬ糸柳

兵庫

山田佳乃

春愁や語り掛くるも句碑の黙

兵庫

小杉伸一路

薔薇の門くぐり安息日のランチ

兵庫

橋本絹子

百千鳥朝の句会の顔揃ふ

兵庫

中村恵美

刈り上げの先生そこに風五月

大阪

辻田あづき

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−−平成28年4月−−

【特選 10句】

虚子館の躑躅明りに影もまた

兵庫

大石 勲

七曜に雨の日多く春深し

兵庫

三村純也

桜抜けさくらさくらを抜けて来し

兵庫

山田佳乃

記念樹のはやも緑蔭なす葉振り

新潟

安原 葉

箱書の母の字頼り雛しまふ

兵庫

永沢達明

六甲の風の白さや青き踏む

鳥取

前田 千

虚子記念館に虚子忌の余韻あり

香川

桑島正樹

新駅の名は摩耶と云ふ初蝶来

兵庫

池田雅一

うららかや五色の旗に谷の風

兵庫

姫野理凡

叡山の雉子啼く頃と虚子の声

香川

増田よしこ

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−−平成28年3月−−

【特選 10句】

蛇穴を出しばかりなるうすみどり

兵庫

三村純也

種袋振れば命の音がする

兵庫

池田雅一

春の水池の手入れもゆき届き

新潟

安原 葉

見送るも大事な役目残る鴨

兵庫

和田華凛

父てふは手持無沙汰や大試験

兵庫

永沢達明

ひとまはり部屋の膨らむ春障子

兵庫

二瓶美奈子

黄の重さ風の軽さや花ミモザ

香川

高橋和子

春の来て師の句碑拝す芦屋川

鳥取

前田 千

アスパラやぱきんと青き香に満ちて

兵庫

河野ひろみ

春の風出会いと別れを連れてくるく

徳島

奥村公香(青少年)

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−−平成28年2月−−

【特選 10句】

海の面のひかり散乱水温む

東京

荒川ともゑ

光る音して薄氷の溶けにけり

兵庫

和田華凛

水音に飛び出しさうな牡丹の芽

兵庫

上原康子

繕ひし垣に順路の新たなる

香川

大山孝子

塀越えて招く梅の香館の庭

岡山

岩崎正子

二ン月や逃げるがごとく過ぐる日々

大阪

橋本佐智

落ちてなほ色鮮やかに庭椿

兵庫

高田菲路

春寒くとも芦屋へはハイヒール

兵庫

藤井啓子

雨雫一つひとつに桂の芽

東京

河野美奇

春しぐれ大海原に吸はれゆく

兵庫

中村恵美

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−−平成28年1月−−

【特選 10句】

六甲の夕日風花染め上ぐる

兵庫

三村純也

波音が好きで遺愛の冬帽子

兵庫

山田佳乃

万両の赤から離れざる日差

石川

辰巳葉流

臘梅の風が香の距離ひろげをり

兵庫

児山綸子

師の邸のとんどの匂ふ館の庭

新潟

安原 葉

芦屋川た走り唄ひ春隣

東京

河野美奇

初笑止まらぬことの苦しさよ

兵庫

柄川武子

寒晴や館を守れる木々の影

群馬

木暮陶句郎

師の庭の手摺新たに春を待つ

兵庫

ほりもとちか

虚子館に碧梧桐忌を修すなり

兵庫

田村惠津子

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