虚子記念文学館投句特選句 平成27年






−−平成27年12月−−

【特選 10句】

きつとある自然治癒力日向ぼこ

兵庫

和田華凛

枯萩の風を忘れてゆきにけり

兵庫

山田佳乃

記念樹も枯木に庭もよく掃かれ

新潟

安原 葉

記念樹と云ふ名を背負ひ大冬木

大阪

田中靖子

短日の雲も走つてをりにけり

東京

荒川ともゑ

詩を生む枯葉の色を積みし館

香川

もりおかともこ

青空のひとかけらなる冬の蝶

兵庫

藤井啓子

短日や我が俳磚にふれしのみ

香川

金沢正惠

年惜む虚子館に師を偲び合ひ

兵庫

五十嵐哲也

希望なる主のみ言葉に冬ぬくし

兵庫

涌羅由美

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−−平成27年11月−−

【特選 10句】

枝々に雫連ねて冬の雨

新潟

安原 葉

文化の日来し方を師に恵まれて

京都

前 悦子

水音を真ん中にして庭紅葉

石川

辰巳葉流

海峡を渡る時雨に日の一矢

兵庫

槌橋眞美

凩の新しき朝つれて来る

兵庫

和田華凛

一枚の枯葉に滲む詩情かな

兵庫

山本康子

虚子が子と遊ぶ句に会ふ冬ぬくし

兵庫

橋本絹子

秋さぶの館人悼み人偲び

兵庫

池田雅一

日当りて桂黄葉のにぎはしく

兵庫

三村純也

神無月虚子照し出す館となり

大阪

林 曜子

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−−平成27年10月−−

【特選 10句】

子規の柿熟るるを待たず逝かれけり

兵庫

奥田好子

子規の庭赤き花より種を採る

兵庫

和田華凛

海峡の潮風もまた末枯れて

兵庫

山田佳乃

虚子館の入口に咲き萩ひそか

兵庫

高田菲路

お怪我の師如何なりしや庭は秋

新潟

安原 葉

さやけしやミサの御言葉残る部屋

徳島

奥村 里

存分に生きて吹かれて破れ蓮

兵庫

上原康子

秋日濃し活気づくもの萎えしもの

兵庫

大谷千華

秋水に添ふ道たどり虚子館へ

大阪

辻田あづき

ふたたびの虚子館を訪ふ暮の秋

新潟

笠原佐千子

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−−平成27年9月−−

【特選 10句】

秋日濃し自転車を重さうに漕ぐ

東京

荒川ともゑ

虚子を知る深く知る虚子館の秋

大阪

多田羅紀子

水澄みて水に覚悟のやうなもの

兵庫

和田華凛

百菊の香より剪り出す一花かな

兵庫

山田佳乃

庭手入して秋水の立ち上る

大阪

梶本佳世子

母生きる限り子であり盆の月

福岡

有田真理子

露を踏みつつ久闊をほどき合ふ

香川

肥塚英子

松手入済みたる空とまだの空

大阪

須知香代子

この芝生踏むなと秋の蚊が襲ふ

愛知

村瀬みさを

虚子館に降り立てば止む秋の雨

新潟

安原 葉

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−−平成27年8月−−

【特選 10句】

記念樹の葉の物語る秋旱

新潟

安原 葉

夏の月へと舟の灯の滑り出す

兵庫

山田佳乃

ひぐらしを耳朶に納めて夕厨

岡山

江本節子

師の庭の秋を仕上げてゆく庭師

兵庫

ほりもとちか

潮風に傾ぐ日傘を虚子館へ

兵庫

池田雅一

水澄みて魚影折れ線芦屋川

兵庫

松岡たけを

路地奥に昔の匂ひ地蔵盆

兵庫

清瀬 環

虚子館の浜木綿潮の香を捉へ

兵庫

柄川武子

虫の音をひろふ虚子館深閑と

兵庫

児山綸子

壮大な銀河に祈る小さき我

兵庫

金田八江子

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−−平成27年7月−−

【特選 10句】

湧き上ぐる雲を見てゐる水母かな

兵庫

小杉伸一路

館の庭風を涼しく手入れして

兵庫

児山綸子

水と云う美しき檻金魚玉

滋賀

森 ふみ子

月涼しキャビンにあふれワインの香

兵庫

田村惠津子

初蝉や人と会ふより懐かしく

兵庫

山本禎次

颱風の中虚子館は客一人

新潟

安原 葉

留守宅を包んでをりし蝉しぐれ

兵庫

高島規容子

隠沼に寛ぐ宿り星涼し

滋賀

石川多歌司

空蝉も加はり句座の満席に

兵庫

藤原純子

黒髪のかすかに揺るる浴衣かな

兵庫

大石 勲

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−−平成27年6月−−

【特選 10句】

記念樹も小さき緑蔭つくりそむ

新潟

安原 葉

ひたすらに文学館へ蟻の道

東京

荒川ともゑ

渇筆に師の声聞くや梅雨曇

滋賀

尾崎恵子

人の世の闇一条の蛍の火

兵庫

黒田千賀子

よく育つたねとは記念樹の茂

京都

宮本幸子

風ぐせの松の傾ぎや卯浪寄す

兵庫

山田佳乃

水の影抱く青蘆を風が抱く

岡山

伴 明子

梅雨空に不機嫌さうな六甲の山

兵庫

みやおか秀

青梅や酸素の多き館の庭

石川

辰巳葉流

先生の病に迷ふ梅雨の館

大阪

辻田あづき

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−−平成27年5月−−

【特選 10句】

地震の碑の二十年経て緑立つ

大阪

山内繭彦

生粋の芦屋育ちの初袷

兵庫

三村純也

青蘆の風のままかな芦屋川

東京

河野美奇

九十九折細りて茅花流しかな

兵庫

山田佳乃

虚子館の桂の先の初夏の風

東京

稲畑廣太郎

我を迎へたる記念樹の若葉風

新潟

安原 葉

風薫る虚子を嚆矢の女流展

高知

橋田憲明

虚子館へ俯き曲る薄暑かな

兵庫

五十嵐哲也

句に集ひ主に繋がりて聖五月

兵庫

涌羅由美

まつさらな心この新緑の中

兵庫

大谷千華

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−−平成27年4月−−

【特選 10句】

今日散つて明日へ飛ぶ花とどまらず

岡山

岩崎正子

咲き初めて花の時間の走り出す

兵庫

玉手のり子

囀の風を引き受け親子句碑

兵庫

児山綸子

雨降つて椿の色の濃き館

石川

辰巳葉流

春眠を西へと運ぶ鉄路かな

東京

稲畑廣太郎

一斉に咲き極まりし庭遅日

大阪

河辺さち子

余花の館明治の女流名句展

兵庫

渡辺しま子

春暁や夢に忘れて来たるもの

兵庫

山田佳乃

阿の朝吽の夕べのチューリップ

三重

威徳寺恭子

タイガース勝つて神戸に春が来る

兵庫

藤井啓子

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−−平成27年3月−−

【特選 10句】

論文に虚子を選びて卒業す

兵庫

三村純也

啓蟄や波の攫ひしままの街

兵庫

山田佳乃

前庭に降り立てば囀の中

新潟

安原 葉

啓蟄の風の譜にあるリズムかな

兵庫

涌羅由美

女流展控へし館に永き日を

東京

荒川ともゑ

雛の縁吾は虚子門にあらずとも

兵庫

木割大雄

初花であり満開でありにけり

兵庫

大谷千華

将棋盤睨む二人に地虫出づ

東京

稲畑廣太郎

咲くものの力は空に水温む

岡山

岩崎正子

ひなまつりおひなさまよりひなあられ

兵庫

村上りん(青少年)

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−−平成27年2月−−

【特選 10句】

塀の外に落ちし一輪紅椿

新潟

安原 葉

春時雨年尾を恋ひて虚子を恋ふ

奈良

塩川雄三

春風の日本に芦屋杞陽展

高知

橋田憲明

人声のやさしくなりぬ牡丹の芽

兵庫

上原康子

芦屋川海へ海へと青き踏む

兵庫

池田雅一

紅ほのと俳磚に映ゆ寒椿

兵庫

高田菲路

俳磚は歴日繋ぎ梅二月

大阪

多田羅紀子

外つ国の兄弟偲び春浅し

東京

稲畑廣太郎

早春の黄より始まる狭庭かな

兵庫

涌羅由美

白梅の塀越え館に伸びにけり

大阪

辻田あづき

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−−平成27年1月−−

【特選 10句】

寒月や地震の記憶を照らし出す

兵庫

深野まり子

記念樹の明るき空や春近し

新潟

安原 葉

早春の虚子館のドア押す朝

香川

真鍋孝子

記念樹の枯木となりし威厳かな

兵庫

三村純也

芦屋浜鴨と鴎の相寄らず

大阪

新宮すゑ子

昭和なら九十年の御慶かな

兵庫

千原叡子

一歩入る館の淑気を纏ひけり

兵庫

大谷千華

ていねいに寒肥たたき込む庭師

兵庫

中村澄子

雪積んで街の輪郭丸めゆく

兵庫

玉手のり子

二十年震災句碑の寒雀

大阪

鈴木兵十郎

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