虚子記念文学館投句特選句 平成26年






−−平成26年2月−−

【特選 10句】

枯木とはなりし記念樹高からず

新潟

安原 葉

一村を眠らせてゆく小夜時雨

兵庫

山田佳乃

鎮魂の二十年目の冬灯

大阪

阪井邦裕

極月や渡仏日記を虚子館に

兵庫

橋本絹子

あやといふ名のたをやかさ冬芒

兵庫

山下眞弓

日を受けて鯨の背ナの円きかな

兵庫

石丸雄介

魁けて華やぐドアのクリスマス

岡山

岩崎正子

もう風を失ひ野辺の枯芒

香川

森本添水

記念樹を守る冬紅葉冬黄葉

東京

稲畑廣太郎

夕ぐれにもみじみましたまぶしいな

兵庫

小野友理恵(青少年)

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−−平成26年11月−−

【特選 10句】

山よりも海よりも冬来る町

京都

山崎貴子

館小春師の温顔の甦り

兵庫

五十嵐哲也

花鋏入れて零るる菊の雨

兵庫

山田佳乃

煎餅食む音にもありし冬日和

兵庫

田附光映

友は畑吾は虚子館へ冬日和

兵庫

柄川武子

記念樹の高き枯葉に空碧し

新潟

安原 葉

秋惜みつつ俳磚に君偲ぶ

東京

稲畑廣太郎

風に彩散らし黄落なる庭に

兵庫

清瀬 環

凩に星の綺羅増す今宵かな

兵庫

涌羅由美

美しい金かく寺にさくもみじかな

東京

平出ともえ(青少年)

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−−平成26年10月−−

【特選 10句】

虚子館の梢に台風来てをりぬ

香川

三宅久美子

鳥威なれど遊んでゐるやうな

兵庫

山田佳乃

父母逝きてより秋祭遠きもの

兵庫

藤井啓子

この距離のこの明るさに薄紅葉

香川

大山孝子

早紅葉や芦屋古町変り果て

兵庫

五十嵐哲也

末枯の川原や風の素つ気なく

大阪

河辺さち子

この秋の蚊は寄せつけぬ虚子の庭

兵庫

勝田展子

虚子館へ木犀の香の抜け道を

兵庫

水田むつみ

記念樹の日の斑に揺れて薄紅葉

岡山

大槻秋女

先生のお庭の落葉拝見す

東京

藤森荘吉

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−−平成26年9月−−

【特選 10句】

虚子館の一扉へだてて松手入

兵庫

熊岡俊子

声聞いて名のある虫かとも思ふ

岡山

高橋玲女

孤高なる蛇笏の孤独芋の露

福岡

大石靖子

動くもの水輪となりて秋の水

香川

肥塚英子

地階へと風を友とし庭芒

岡山

岩崎正子

杞陽展拝し但馬の秋偲ぶ

大阪

梶本佳世子

秋草の好ましさとは挿すがまま

兵庫

深尾真理子

灯下親し丸き鉛筆もて投句

兵庫

藤井啓子

風過ぎてより桔梗の揺れやまず

兵庫

山田佳乃

秋の蚊に三度食はれし館の庭

東京

稲畑廣太郎

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−−平成26年8月−−

【特選 10句】

記念樹も旱やけせし枝の先

新潟

安原 葉

虚子偲び杞陽語りて燈下親し

兵庫

五十嵐哲也

秋蝉の一途に芦屋乗つ取られ

鳥取

椋 誠一朗

すつきりと消えぬ黒板秋暑し

兵庫

藤井啓子

草原に牛を放ちて秋暑し

東京

稲畑廣太郎

虚子館も谷崎館も盆休

兵庫

三村純也

空蝉の葉表に聴く風の音

愛媛

中野匡子

走馬灯影の逃げゆく指の先

兵庫

山田佳乃

人の世の巡る迅さや走馬灯

兵庫

高橋純子

妹のお昼ねすがた見てしまう

兵庫

清水桜杜(青少年)

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−−平成26年7月−−

【特選 10句】

夏の蝶去りて又来る記念樹に

新潟

安原 葉

風知草高みの風は知らぬまま

岡山

伴 明子

館涼し虚子の世語る友のゐて

兵庫

五十嵐哲也

露涼し二尺の水の落ちる庭

兵庫

西村正子

俳磚の庭の黙より梅雨の蝶

兵庫

児山綸子

白百合の影白百合に溺れけり

滋賀

森 ふみ子

俳磚の文字なぞりけり蟻の道

神奈川

緒方初美

梅雨空の蒼全開に明けゆけり

岡山

荒木絹江

館涼し笑顔美人に迎へらる

神奈川

小田島美紀子

通り道鳴くセミ達の四重奏

大阪

刀根  (青少年)

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−−平成26年6月−−

【特選 10句】

薫風や予期せぬ旅となることも

東京

稲畑廣太郎

吹く風に揺れつつ四葩招く庭

新潟

安原 葉

蚊遣焚き扉を開け放ちありにけり

兵庫

三村純也

六月といへど海風心地よく

大阪

山下美典

森を来る声に覚えや五月闇

滋賀

石川多歌司

碑の文字に棲みつき雨蛙

兵庫

山田佳乃

漫録と云ふ風薫る筆の跡

大阪

生澤瑛子

露涼し我が俳磚の辺に立てば

香川

金沢正惠

雨意やがて梅雨入りの空となりゆけり

兵庫

奥田好子

水音といふ涼しさに身をひたす

兵庫

上原康子

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−−平成26年5月−−

【特選 10句】

雨後の日のはや木下闇つくる庭

新潟

安原 葉

花桐の香に理事会の進みゆく

東京

稲畑廣太郎

柏餅食べ終へし葉のすぐ乾く

兵庫

三村純也

理事会の弁当美味き五月かな

東京

大久保白村

虚子館へ来よと芦屋の緑立つ

東京

河野美奇

極楽の文学の世へ地虫出づ

高知

橋田憲明

新緑の風に心を立て直す

群馬

木暮陶句郎

石楠花の紅濃き女人高野かな

兵庫

山田佳乃

みづみづしき庭の一部に竹の秋

兵庫

高杉靖子

もこもこと山膨らんでゐる五月

兵庫

涌羅由美

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−−平成26年4月−−

【特選 10句】

海風に吹きもどさるる花吹雪

兵庫

三村純也

虚子館の庭に腰掛け春惜む

新潟

安原 葉

亀鳴くや軍艦島といふ遺産

東京

稲畑廣太郎

岸に寄る波音残し鴨帰る

兵庫

小杉伸一路

唐崎の松の朧や湖の凪ぐ

滋賀

石川多歌司

三椏の花の点描石仏

兵庫

山田佳乃

花人と違ふ靴音通り過ぐ

岡山

伴 明子

花ミモザそつと潮風まつはりぬ

大阪

大野呂愛子

塵一つなき庭にある落椿

愛媛

中野匡子

大虚子の翼下に集ひ暖かし

香川

三宅久美子

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−−平成26年3月−−

【特選 10句】

梅が香に憩ふ開館五分前

東京

大久保白村

盆梅を庭に下せし月日かな

岡山

大槻秋女

剪定も塗り替へもして館の庭

新潟

安原 葉

俳磚のふえゆくことも春めきぬ

兵庫

三村純也

賀に侍る客人連れて涅槃西風

東京

稲畑廣太郎

師の庭の一人分てふ春寒に

岡山

綾野静惠

虚子館に子等と訪ねて寒明くる

熊本

笠井鶴美

何やらと飛ぶもの多し春の空

兵庫

涌羅由美

春の雲らしく流れてをりにけり

岡山

高橋玲女

ものの影より春風の生れけり

香川

信里由美子

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−−平成26年2月−−

【特選 10句】

あたたかや玄関諸所に手摺つけ

新潟

安原 葉

虚子館の未来語る目凍ゆるむ

東京

稲畑廣太郎

水の綺羅促しをりし草青む

東京

河野美奇

下萌ゆる芦屋の河原渡り来し

東京

大久保白村

紅梅のそこここはじけをりにけり

京都

宮本幸子

春水の綺羅玉となり音となり

岡山

荒木絹江

水底の影動き出す春隣

岡山

石井宏幸

俳磚の母へと二月礼者かな

兵庫

深野まり子

咲きたくて咲きたくて寒椿かな

大阪

生澤瑛子

梅が香に鳥語加はる館の庭

石川

辰巳葉流

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−−平成26年1月−−

【特選 10句】

雪国を発ち寒晴の虚子館に

新潟

安原 葉

初旅や今年も芦屋虚子館へ

東京

大久保白村

三間の廊下行き来し春待てり

青森

安部元気

歌舞伎座の舞台はみ出す飾海老

兵庫

山田佳乃

流れなき大寒の日の芦屋川

大阪

鶴岡言成

大寒や奥六甲の白きこと

兵庫

山村千惠子

俳磚の藍より淑気満ちし館

石川

赤島磨智子

せせらぎの音の高さや春隣

兵庫

上原康子

命名は虚子と汀子や年酒酌む

兵庫

英賀美千代

読初や館の俳磚なぞるより

兵庫

奥田好子

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