虚子記念文学館投句特選句 平成25年






−−平成25年12月−−

【特選 10句】

雪の富士今日も車窓に嵌めて旅

東京

稲畑廣太郎

虚子館へ師走の雨に濡るるとも

新潟

安原 葉

虚子館に時雨宿りとなりにけり

兵庫

三村純也

虚子館は詩のまほろば散紅葉

兵庫

水田むつみ

風に散る筧の水の寒きかな

兵庫

高田菲路

蘆枯るるほどに光をまとひゆく

岡山

石井宏幸

俳磚に師走心を鎮めをり

兵庫

五十嵐哲也

落葉踏み昨夜の風音踏んでをり

福岡

黒田純子

暮早し明治の資料積みあげて

兵庫

橋本絹子

水底の光る模様となる冬日

兵庫

小杉伸一路

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−−平成25年11月−−

【特選 10句】

日陰にも咲けば咲くもの石蕗の花

兵庫

三村純也

客迎ふ門に咲き誇る藤袴

新潟

安原 葉

落葉踏む音や人皆詩人たり

滋賀

石川多歌司

業平の歌碑にもみづる桜かな

大阪

大川隆夫

人去りて桂紅葉の静けさに

兵庫

奥田好子

譲るもの譲り静かに冬に入る

兵庫

五十嵐哲也

責任をひしひし感じ神無月

東京

稲畑廣太郎

海光り荻一面の芦屋川

兵庫

大石 勲

朝かげの水を透かして紅葉川

兵庫

山田佳乃

木々高き庭の歳月紅葉散る

兵庫

田中節夫

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−−平成25年10月−−

【特選 10句】

秋高きことに澄みゆく影となる

岡山

石井宏幸

六甲に日あり虚子館秋時雨

新潟

安原 葉

掃ききれぬものを残して野分去る

兵庫

三村純也

六甲の牧場鎮もり馬肥ゆる

東京

稲畑廣太郎

新しき芝生に日の斑秋日和

東京

荒川ともゑ

地下聖堂愁思に沈むマリア像

兵庫

山田佳乃

佇めば水の音にも深む秋

兵庫

村田明子

鳴き合うてつがひ離れず石たたき

大阪

山内繭彦

長旅のあの地この地の秋の雲

東京

藤森荘吉

金風や日の斑に浮かむ館の庭

鳥取

椋 誠一朗

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−−平成25年9月−−

【特選 10句】

木もれ日の影の深さよ館の秋

兵庫

中西あい

秋日干名残り桂の記念樹も

新潟

安原 葉

芒散る人の余命といふ運命

東京

稲畑廣太郎

淡路の灯あはしと思ふ良夜かな

兵庫

三村純也

木洩日も風情の秋を零したる

愛知

中野ひろみ

湖に触れ比叡越え行く帰燕かな

滋賀

石川多歌司

一天の整ひ明日は白露かな

兵庫

宮地玲子

俳磚にしのぶ人あり獺祭忌

兵庫

橋本絹子

俳磚へ手向け心の彼岸花

兵庫

水田むつみ

水音をかたへに露の竹箒

岡山

岩崎正子

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−−平成25年8月−−

【特選 10句】

葛の花深く沈むといふことを

岡山

石井宏幸

向日葵をつなぎ止めたる大地かな

兵庫

岸川佐江

手振り整へて輪に入る盆踊

滋賀

石川多歌司

雲抜けて大暑に月の満ちにけり

兵庫

黒田國義

雨だれに紅極まれる枝垂れ萩

兵庫

佐藤悦子

初盆といふ大いなる波寄せ来

兵庫

三村純也

六甲の端山に消えし流れ星

兵庫

山中阿木子

眼裏の電車通学麦の秋

岡山

池田純子

炎天の庭に湧き立つ闘志かな

石川

辰巳葉流

館の庭来る浜風も秋暑し

新潟

安原 葉

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−−平成25年7月−−

【特選 10句】

風撫づるわが俳磚の涼しさよ

新潟

安原 葉

虚子館や師の謦咳の黴知らず

兵庫

五十嵐哲也

虚子館に梅雨明の空ありにけり

兵庫

深野まり子

水音に涼しき思ひ邸の庭

兵庫

児山綸子

梅雨明も成り行き任せ鳴雪展

東京

大久保白村

虚子館に心くばりの蚊遣香

岡山

大槻秋女

水遊びする子の背ナに日の斑かな

兵庫

池田雅一

伝統の一戦に沸き夜の秋

兵庫

小杉伸一路

絵硝子のブルーに館の涼しさよ

兵庫

田中節夫

鳴雪に長き髭あり館涼し

兵庫

日下徳一

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−−平成25年6月−−

【特選 10句】

五月晴ここに俳磚増ゆるてふ

東京

稲畑廣太郎

樗洩る日の斑あそぶや初夏の庭

兵庫

高田菲路

草原にあてなく放つ草矢かな

大阪

山内繭彦

不折画の虚碧似顔絵風薫る

大阪

徳澤南風子

記念樹をはじめ茂りてしづむ館

新潟

安原 葉

青空の下に桂の木下闇

高知

高橋 蛙

朝日射す桂の樹下の夏帽子

高知

高橋以登

庭光る一水の精青き芝

岡山

奥山登志行

館涼し妣連れて来し思ひ出も

兵庫

三村純也

蛍火の沈めば草の匂ひけり

兵庫

山田佳乃

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−−平成25年5月−−

【特選 10句】

若葉風纏ひ帰つて来る君

東京

稲畑廣太郎

富士見つつ憲法記念日を西下

東京

大久保白村

青蘆や光りて縫うて芦屋川

東京

河野美奇

記念樹の緑蔭が待つ館の庭

新潟

安原 葉

麗かやおもかげの髯なづる風

高知

橋田憲明

青葉よしその眩しのまたよくて

京都

福井鳳水

更衣へて虚子館に佳き一刻を

兵庫

五十嵐哲也

海近く風にのりたる行々子

兵庫

大石 勲

鳴雪翁近世生れ髭涼し

島根

小村四温

黴の書にみたび背正す記念館

兵庫

橋本絹子

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−−平成25年4月−−

【特選 10句】

ホ誌六百号繙く花の虚子館に

米国

高橋カズ子

虚子館に学びて庭の春惜む

新潟

安原 葉

入学の初心に戻り教師われ

兵庫

三村純也

春惜み句碑を巡りて虚子館へ

東京

鈴木 浩

変はらざる垂水のリズム春惜む

滋賀

石川多歌司

散りきつてなほ花冷といふ日々に

大阪

堀江信彦

春深し記念樹のびのび枝を張り

兵庫

五十嵐哲也

言葉には盡くせず牡丹咲き誇る

大阪

若槻香女

鳴雪のネーハン像の出開帳

兵庫

大石 勲

黄桜や庭の歳月ふと偲び

兵庫

黒田千賀子

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−−平成25年3月−−

【特選 10句】

霞む山霞む野を来て虚子館へ

東京

今井千鶴子

この庭の淡墨桜語るもの

東京

河野美奇

理事会や春分の日の文学館

東京

大久保白村

卒業式日出づる国を忘れしか

東京

稲畑廣太郎

俳磚に地霊天霊落椿

高知

橋田憲明

雨までも翳り淡墨桜かな

群馬

木暮陶句郎

目を上げるとき六甲に春の雪

兵庫

藤井啓子

聞き分けのよき子に渡す雛あられ

兵庫

涌羅由美

虚子館のシンボルツリー木の芽風

兵庫

橋本絹子

虚子館の桂の芽吹き一色に

広島

右田至鏡

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−−平成25年2月−−

【特選 10句】

この岩に獺の祭の昔あり

東京

稲畑廣太郎

六甲の雲早春の海目指す

新潟

安原 葉

栃の芽の光溢るる師のお庭

東京

河野美奇

大正ロマン学ぶ二月の文学館

東京

大久保白村

何見ても晴れぬ心の冴返る

兵庫

三村純也

マスクしておはやうなどと既に昼

京都

宮本幸子

風花と遊ぶかに笹そよぎけり

兵庫

高田菲蕗

師を友を偲ぶ虚子館日脚伸ぶ

兵庫

五十嵐哲也

早春の釣人湖の黙を解く

滋賀

石川多歌司

表彰の句友へ拍手あたたかく

石川

西田さい雪

【青少年特別賞】
熱い風吹く季節に心ゆれる 兵庫 濱口 舞
君の背をこがしてあげる夏の夜 兵庫 宮本侑佳
熱帯夜君と眺めた夜の花 兵庫 三浦春菜
夏祭りゆかた姿にきゅんとする 兵庫 黒原藍奈
道端に新たに咲いた命の芽 兵庫 京山 祥
木の芽でもきっときれいな葉になるよ 兵庫 池田愛菜
おばあちゃん天から春の雪降らせ 兵庫 美野まりん
芦屋川桜吹雪を流すんだ 兵庫 小野楓花
歩いたらかげがどこでもついてくる 兵庫 安田ゆたか

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−−平成25年1月−−

【特選 10句】

快晴の六甲峰に今朝の雪

新潟

安原 葉

初旅や昨日は芦屋ホトトギス

東京

大久保白村

書初といふ気負ひなく筆をとる

大阪

山内繭彦

追伸は自筆なりけり初便

兵庫

千原叡子

芦屋より文学館へ恵方道

兵庫

藤井啓子

浜風の満つる芦屋の年賀かな

兵庫

山田佳乃

七種や籠の緑の濃く淡く

兵庫

佐藤悦子

なづな粥青き地球の気を貰ひ

兵庫

玉手のり子

虚子館に御慶交はして恙なく

兵庫

五十嵐哲也

冬ざれて小さき魚棲む芦屋川

大阪

鶴岡言成

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