虚子記念文学館投句特選句 平成24年






−−平成24年12月−−

【特選 10句】

まづ枝に幹にも日差しきし枯木

新潟

安原 葉

館に入る一歩に眩し冬紅葉

東京

稲畑廣太郎

大鷹の視界を去りし高さかな

兵庫

小杉伸一路

俳磚はいのちのしるべ年惜む

大阪

徳澤南風子

霜晴の空一片の雲もなく

大阪

山内繭彦

踏む音にそれとわかりし朴落葉

兵庫

高田菲路

廣太郎晴れ賜りし納め句座

広島

右田至鏡

日向にも綿虫飛んで母は亡し

兵庫

三村純也

冬晴や記念樹仰ぐしみじみと

兵庫

五十嵐哲也

風下に入る余地ある焚火かな

滋賀

石川多歌司

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−−平成24年11月−−

【特選 10句】

一雨といへる冬めくもののあり

兵庫

後藤立夫

吹き飛んで来て朴落葉なりしかな

兵庫

三村純也

記念樹の下枝日陰に寄る枯葉

京都

安原 葉

虚子館の小春の窓辺年尾像

大阪

中嶋陽太

小春日をまとひ標野をそぞろ歩す

滋賀

石川多歌司

遊べとや木の葉敷きつめ一茶句碑

大阪

鈴木敏夫

白雲に触れんと記念樹の黄葉

兵庫

村田明子

松風の時雨を抜けて虚子館へ

兵庫

田中節夫

春秋を仕上げし桂黄葉散る

大阪

石橋玲子

芦屋川河口近くに残る鴨

大阪

鶴岡言成

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−−平成24年10月−−

【特選 10句】

虚子館に紛れし秋の蚊も親し

京都

安原 葉

虚子館に浜風だんぢり囃子聞く

大阪

徳澤南風子

野分跡止めず手入れ届く庭

大阪

徳澤彰子

秋日濃き稲畑邸に水の音

群馬

大島紫篁

行く秋の看取りの暇の小句会

兵庫

三村純也

こぼれても零れてもなほ萩盛り

広島

右田至鏡

鮭遡る命繋ぐや午後日差し

北海道

本間京子

秋晴を来て落着きし記念館

京都

福井鳳水

引く時も満ち来る時も潮は秋

兵庫

小杉伸一路

燈下親し虚子の若き日知りたくて

兵庫

五十嵐哲也

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−−平成24年9月−−

【特選 10句】

虚子館を訪ねて学ぶ子規忌かな

京都

安原 葉

海よりの風の涼しき松原に

大阪

宮崎 正

窓越しに読む俳磚や秋の雨

兵庫

高田菲路

底紅の癒えよ癒えよと揺れにけり

兵庫

三村純也

子規偲び虚子語りたし館の秋

兵庫

五十嵐哲也

雲崩れ風の乱るる秋の空

石川

伊東弥太郎

朝霧のゆつくり晴れて里の富士

岡山

黒杭良雄

湖畔宿星の虜となる夜長

滋賀

石川多歌司

虚子館の資料存分萩の風

兵庫

橋本絹子

拾ひ読む俳磚時に身に入みて

兵庫

田中節夫

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−−平成24年8月−−

【特選 10句】

暑くとも退院の師に会へる旅

京都

安原 葉

熊蝉を抱きて記念樹膨らめり

東京

稲畑廣太郎

汀子邸より虚子館へ夕立来る

兵庫

藤井啓子

虚子館の半地下暗め雷迫る

兵庫

三村純也

浜沿ひはまだ降り出さず大夕立

大阪

山内繭彦

汗入れてより俳磚に偲ぶ人

兵庫

五十嵐哲也

松並木翳を拾へど秋暑し

大阪

友井正明

一しぼりして花おはる木槿かな

滋賀

森ふみ子

虚子館を愛せし人を偲ぶ秋

大阪

石橋玲子

萩芒敷石に垂れ膝に触れ

兵庫

田中節夫

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−−平成24年7月−−

【特選 10句】

流れ星天の川から来たのかな

兵庫

小野龍太郎(青少年)

迅雷のごと怪我の報伝はりぬ

兵庫

三村純也

海の風涼し水音も木洩日も

京都

安原 葉

遠雷を耳に推敲の夜の更けぬ

滋賀

石川多歌司

虚子館へ極暑の旅をみそなはせ

広島

右田至鏡

病み抜けて訪ふ虚子館や蝉涼し

岡山

山口喜代子

噴水の形と音を見てをりぬ

兵庫

池田文子

花合歓の思ひ出紡ぐやうに咲く

大阪

須知香代子

百枚の青田に遅速ありにけり

兵庫

高橋純子

七月の風まかせなる白帆かな

兵庫

山田佳乃

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−−平成24年6月−−

【特選 10句】

笑顔ある家には守宮よく似合ふ

東京

稲畑廣太郎

記念樹の茂りて根方石暗し

京都

安原 葉

俳磚の薮蚊の多き一トところ

兵庫

三村純也

薫風や虚子逝きし齢に吾も至る

兵庫

堀口俊一

足弱も揃ふ虚子館梅雨晴間

兵庫

五十嵐哲也

にび色に俳磚光る梅雨はれ間

大阪

若槻香女

若葉しむ生まれし土地にもどり住む

兵庫

平田ひろみ

孑孑の湧きて天水桶古りぬ

大阪

大石澄子

梅天を高くしてゐるジャカランダ

大阪

須知香代子

山梔子の香を崩しゆく雨脚に

大阪

河辺さち子

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−−平成24年5月−−

【特選 10句】

春宵となりゆく刻を虚子館に

東京

今井千鶴子

聖五月祈りの日々となりゆけり

東京

稲畑廣太郎

虚子の松芦屋の松に春惜む

東京

河野美奇

薄闇にほどけて淡き藤の波

兵庫

山田佳乃

館五月桂若葉の美しき

東京

大久保白村

風に影重ね葉桜とはなりぬ

千葉

高瀬竟二

八重に咲く力を溜めてゐる桜

群馬

木暮陶句郎

薫風や風早芦屋海つづき

高知

橋田憲明

館新樹かそけき水音ありにけり

大阪

辻 千緑

水音の静寂深める邸の庭

大阪

辻 順子

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−−平成24年4月−−

【特選 10句】

虚子館の裏庭埋めし樟落葉

大阪

辻 千緑

西ノ下を虚子忌を明日に学びけり

東京

大久保白村

俳磚に雨の落花の貼りつける

兵庫

三村純也

雨とても芦屋の花に暗さなし

兵庫

三村仁子

虚子遺墨じつくり拝す花の雨

兵庫

日下徳一

昂りは吉野の花の余韻かな

滋賀

石川多歌司

忽忙の師の変らざる花の日々

京都

吉田節子

存問の志を賜はりて風光る

東京

瀧澤 博

俳磚の夫の名吾が名花の中

東京

瀧澤 幸

館や春虚子の郷愁にも触れて

大阪

石橋玲子

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−−平成24年3月−−

【特選 10句】

故郷恋ふ虚子に見えし館ぬくし

京都

安原 葉

笑ふ山新快速の突き抜けて

東京

稲畑廣太郎

理事会や昨日は春の芦屋詠み

東京

大久保白村

微温みたる水音柔ら邸の庭

大阪

宮崎 正

河童忌や俳磚を跳ぶ青蛙

兵庫

日下徳一

俳磚の供華とも一つ落椿

大阪

辻 千緑

春風や神仙体の一句誦し

高知

橋田憲明

霞みゆく沖のごとくに過去のあり

岡山

石井宏幸

虚子椿梅よりさはに咲けるかな

東京

河野美奇

水温む渦巻く心残こしつつ

群馬

木暮陶句郎

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−−平成24年2月−−

【特選 10句】

春の雪降る虚子館を見たかりし

東京

今井千鶴子

立春の光を海へ芦屋川

大阪

徳澤南風子

ありし日のままの書棚にある余寒

兵庫

山田佳乃

俳磚の一句一句の春隣

京都

福井鳳水

実朝の再演決まり日脚伸ぶ

兵庫

三村純也

浅き春庭は水音あるばかり

京都

安原 葉

我鬼さんも同じや吾も朝寝組

東京

河野美奇

白銀を発ち残雪を越えて館

東京

稲畑廣太郎

思ひ入れ深き手入れの芝青む

兵庫

水田むつみ

立春の六甲に雲遊びをり

大阪

辻 千緑

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−−平成24年1月−−

【特選 10句】

俳磚の友へ挨拶初句会

大阪

宮崎 正

手入れよき庭には別の寒さあり

兵庫

松田恭子

震災の思ひの深き時雨かな

京都

福井鳳水

みな若し偲ぶ子規庵初句会

京都

安原 葉

俳磚の一句一句に御慶かな

広島

右田至鏡

俳磚に句友に御慶記念館

大阪

辻 千緑

虚子の書を繙く灯下霜の声

兵庫

小杉伸一路

蘆枯れて立つ水音を繋ぎゆく

岡山

石井宏幸

人日の文学館へ一人旅

東京

大久保白村

虚子館に遅き御慶を交はしたる

兵庫

五十嵐哲也

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