虚子記念文学館投句特選句 平成23年






−−平成23年12月−−

【特選 10句】

寒灯下文字躍り出す書簡かな

東京

稲畑廣太郎

水音に残る紅葉となりにけり

京都

安原 葉

虚子館を去る未練あり日短

大阪

徳澤南風子

漱石忌文人俳句展最中

東京

大久保白村

クリスマス師弟書簡にまみえたる

神奈川

小田島美紀子

冬ぬくし我鬼の一文人を呼び

兵庫

五十嵐哲也

時雨るるや虚子館のドアやや重く

兵庫

三村純也

開かれし扉の内の散紅葉

福岡

阿比留初見

炭火より故郷の朝ににほひ立つ

兵庫

山田佳乃

虚子館へ冬黄葉また冬紅葉

兵庫

堀口俊一

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−−平成23年11月−−

【特選 10句】

新資料展示はじまり館小春

京都

安原 葉

五百万本のコスモス見し歩を虚子館に

米国

高橋カズ子

凩に虚子館の扉の少し鳴る

兵庫

三村純也

寂として虚子ありぬ冬日向

熊本

山下接穂

裏庭に山茶花朝の日をのせて

熊本

山下君子

老い故に遊ぶ京都のもみぢ狩

広島

山本義郎

養生の芝にやさしく落葉積む

兵庫

五十嵐至夏

個性ある文字も人柄冬ぬくし

京都

山崎貴子

雨の日を明るくしたり朴黄葉

兵庫

田中節夫

大虚子に叱られし夢冬に入る

兵庫

橋本絹子

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−−平成23年10月−−

【特選 10句】

水を打つ館の前庭奥庭も

京都

安原 葉

菊月の大安の虚子記念館

山口

松本圭二

芥川投稿文に愁思ふと

東京

大久保白村

木犀の匂うて古町らしくなる

鳥取

椋 誠一朗

木犀の匂ひそつくり譲る館

岡山

岩崎正子

震災の句碑は語部鳥渡る

大阪

徳澤南風子

澄む水のしづかに海へ芦屋川

神奈川

加藤厚子

芸術の秋漱石と龍之介

兵庫

奥田好子

あや芒たをやかに揺れしやんと伸び

京都

宮本幸子

ひと雨に空は一気に秋の色

兵庫

涌羅由美

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−−平成23年9月−−

【特選 10句】

秋の蚊を連れて新幹線の旅

東京

稲畑廣太郎

訪ひ重ね十幾年や館の秋

大阪

辻 千緑

四国越え台風迫る館閑か

東京

大久保白村

土砂流しつくせる水の澄めるかな

兵庫

岸川佐江

特選句読み合ふ高さ藤袴

高知

高橋以登

藤袴虚子館掲示板の前

高知

高橋 蛙

爽やかに虚子の盟友語る館

大阪

石橋玲子

芦屋川草も疲れて秋暑し

大阪

鶴岡言成

朝影にゆるり消えゆく風の盆

兵庫

山田佳乃

虚子館の一叢は黄の曼珠沙華

兵庫

橋本絹子

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−−平成23年8月−−

【特選 10句】

館の庭けふは人なく秋涼し

京都

安原 葉

俳磚を巡る秋の蚊払ひつつ

兵庫

三村純也

水音に邸の木蔭の風は秋

大阪

宮崎 正

八月の陰と光の十五日

岡山

黒杭良雄

群れつどふ御歯黒蜻蛉芦屋川

大阪

鶴岡言成

昨夜の雨残暑一枚流しゆく

兵庫

奥田好子

星月夜とは島風の濡るるほど

兵庫

山田佳乃

俳磚に秋めく日差し零れたり

鳥取

椋 誠一朗

自慢気に昭和を語り飲むラムネ

兵庫

涌羅由美

青蘆に水音の闇育ちをり

岡山

石井宏幸

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−−平成23年7月−−

【特選 10句】

虚子館の桂大樹の若葉かな

徳島

石原松女

記念樹の包み切れざる影涼し

兵庫

山之口倫子

清冽な音に浸りて涼をとる

兵庫

田中節夫

梅雨明の豊かな風の記念樹に

兵庫

五十嵐哲也

虚子館を越え邸奥へ夏の蝶

京都

安原 葉

俳磚の庭に結べる露涼し

大阪

須知香代子

夏萩や真昼の邸にある静寂

兵庫

松田恭子

虚子館のベンチに独り蝉しぐれ

兵庫

橋本絹子

館涼し虚子の世界に浸りゐて

大阪

辻 千緑

炎天を来て高虚子の懐に

広島

右田至鏡

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−−平成23年6月−−

【特選 10句】

手入して水打ちをへし庭を訪ふ

京都

安原 葉

深川正一郎展を蚊と共に

東京

稲畑廣太郎

六月や正一郎展後半へ

東京

大久保白村

虚子館へ梅雨空を引つぱつて来し

東京

荒川ともゑ

水音のどこか懐かし梅雨の館

鳥取

椋誠一朗

俳磚に卯の花腐しはよ上がれ

兵庫

三村純也

俳磚につと来て止る夏の蝶

兵庫

日下徳一

夏草の海へと傾ぐ芦屋川

大阪

鶴岡言成

虚子膝下九羊会あり青嵐

大阪

徳澤南風子

虚子館へ青葦の風芦屋川

大阪

徳澤彰子

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−−平成23年5月−−

【特選 10句】

虚子館も子供の日なり上天気

東京

今井千鶴子

新緑の館新しき船出かな

東京

稲畑廣太郎

降り立ちて館の新樹の幹に寄る

京都

安原 葉

俳磚に卯の花腐ししぶくほど

兵庫

三村純也

緑立つ芦屋の松や雲高し

東京

河野美奇

三連休昨日どんたく今日理事会

東京

大久保白村

冬扇といひし生涯風薫る

高知

橋田憲明

近寄れば俳磚親し五月晴

兵庫

五十嵐哲也

踏んで見る文学館の楠落葉

大阪

辻 千緑

顔触れに出逢ふ対談館うらら

兵庫

奥田好子

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−−平成23年4月−−

【特選 10句】

強風に地震に遅れて春の闇

東京

稲畑廣太郎

枝伸べて待ちゐし館の若楓

京都

安原 葉

薄墨の落花静かに風にのり

岡山

大槻秋女

俳磚に差すうすずみの花影かな

兵庫

長尾輝星

文学館公益認可風光る

東京

大久保白村

なつかしき枝垂桜もつくばひも

青森

工藤乃里子

しなやかに枝垂桜は風躱す

兵庫

玉手のり子

俳磚の日溜りに蝿生れたる

兵庫

三村純也

黄桜や紅のそぶりを見せぬ色

大阪

石橋玲子

落椿零れたる音地の吐息

大阪

友井正明

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−−平成23年3月−−

【特選 10句】

雛にも知らす悲しみありにけり

京都

安原 葉

虚子館に赤い椿の散りくづれ

東京

今井千鶴子

芦屋川きらきら花を急かせをり

東京

河野美奇

いつ来ても手入れよき庭落椿

兵庫

水田むつみ

理事会や三月の我が誕生日

東京

大久保白村

桂芽吹く虚子館展示能俳句

大阪

徳澤南風子

海風に明るき庭の花ミモザ

大阪

出水青陵

啓蟄や芝生養生中と留守

高知

橋田憲明

俳磚に侍る一輪落椿

大阪

辻 千緑

佇めば庭の点睛春の水

兵庫

田中節夫

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−−平成23年2月−−

【特選 10句】

春寒き彼の日の虚子の謡ふ背な

東京

今井千鶴子

紅梅の花弁日差に疲れけり

東京

稲畑廣太郎

虚子館の庭寒明の日の眩し

京都

安原 葉

鳴雪の古稀の写し絵鳴雪忌

東京

河野美奇

芦屋川下れば細り春の水

石川

西田さい雪

虚子館へ回り道して花ミモザ

大阪

中嶋陽太

虚子打ちし大鼓春を奏づ音に

大阪

徳澤南風子

風往き来して館の梅邸の梅

大阪

徳澤彰子

レストラン音楽なってあかいうめ

大阪

櫻井かな子(青少年)

なんでかなこのごろさむいひがつづく

兵庫

しみずおと(青少年)

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−−平成23年1月−−

【特選 10句】

冬晴の朝一番の館の客

京都

安原 葉

虚子のこと年尾のことに去年今年

熊本

山下しげ人

冬麗の虚子の心にふるゝ旅

熊本

山下さと子

松過ぎの文学館に調べ物

東京

大久保白村

俳磚の虚子の御句へ御慶述ぶ

兵庫

三村純也

難読の解けて館の冬日和

岡山

黒杭良雄

写生説く虚子の書簡のあたたかき

大阪

若槻香女

春近き虚子記念館めぐりけり

京都

福井鳳水

虚子に学べる充実感明の春

兵庫

長尾輝星

虚子像に御慶一番乗りをして

大阪

辻 千緑

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