虚子記念文学館投句特選句 平成22年






−−平成22年12月−−

【特選 10句】

下枝に残る紅葉の親しさよ

京都

安原 葉

写生文出す話など日向ぼこ

東京

稲畑廣太郎

急ぎ来て落着く館の冬紅葉

香川

小西としじ

虚子館に小春の一日賜はりぬ

福岡

池田昭雄

俳磚に来てとどまりし冬日かな

鳥取

椋 誠一朗

極月やいざ鎌倉を想ふ能

東京

大久保白村

俳磚の煤を払ふはいつならむ

兵庫

三村純也

為山画の子規庵句会淑気満つ

大阪

徳澤南風子

館の庭落葉模様を敷きつめて

岡山

大槻秋女

炊出しの人を集めてゐる焚火

兵庫

山田佳乃

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−−平成22年11月−−

【特選 10句】

時差惚けの居眠るベンチ館小春

京都

安原 葉

朴落葉飛び交ふほどの風日和

兵庫

三村純也

畑さんも小林さんも冬支度

東京

稲畑廣太郎

小春日や館報丁度二十号

東京

大久保白村

幽玄の虚子垣間見し館小春

大阪

石橋玲子

庭石に生れたる模様冬の蝶

滋賀

石川多歌司

霜除のすつかり出来し虚子館に

兵庫

兒山綸子

落葉掃く背に六甲の風の音

兵庫

柄川武子

城山の桜紅葉も潜るべし

岡山

黒杭良雄

看取終へ信号待ちや後の月

大阪

辻 昌子

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−−平成22年10月−−

【特選 10句】

虚子と能学び拝すや館の秋

京都

安原 葉

十月が真青な空で始まりぬ

岡山

黒杭良雄

十月や靜かに急ぐ展示替

東京

大久保白村

椿の実一ついたゞき館を辞す

大阪

辻 千緑

海と山そして虚子館秋日濃し

兵庫

長尾輝星

こぼこぼとぴたぴたと音水澄みぬ

京都

宮本幸子

虚子打ちし鼓と見れば露けしや

兵庫

玉手のり子

松籟の芦屋浜より鵙高音

大阪

徳澤南風子

訪ひ重ね俳磚に秋思深き日も

兵庫

五十嵐哲也

母の手が背にあるやうな菊日和

兵庫

松田恭子

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−−平成22年9月−−

【特選 10句】

虚子館も邸のお庭も秋旱

京都

安原 葉

関東の冷え関西の残暑かな

東京

稲畑廣太郎

虚子館に丹波の二泊学ぶ秋

東京

大久保白村

曳く尾より水のしろがね銀やんま

岡山

石井宏幸

虚子館のしづかな一日昼の虫

大阪

辻 千緑

虚子館の秋の蚊なれば刺されても

米国

高橋カズ子

露けしや虚子の遺愛の鼓手に

兵庫

三村純也

ひとしきり秋の蚊のこと色々と

大阪

鶴岡言成

虚子の文字泊月の文字秋扇

兵庫

山田佳乃

男郎花女あるじの庭隅に

大阪

石橋玲子

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−−平成22年8月−−

【特選 10句】

秋立つや特別展の馴染む館

東京

稲畑廣太郎

俳磚を這ひ上りゆく蟻の道

兵庫

三村純也

俳磚に風流れをり今朝の秋

兵庫

井上芙美子

バス降りて虚子館までを拾ふ秋

滋賀

忽那弘子

太陽の力ゆるめず秋来る

鳥取

椋 則子

虚子館の紅萩点り初めにけり

兵庫

柄川武子

虚子の軸めぐるいっとき館涼し

兵庫

堀口俊一

探らばや敷石伝ひ庭の秋

兵庫

田中節夫

記念樹の歳月館の蝉しぐれ

兵庫

山下眞弓

薮茗荷咲き増え館の昼閑か

兵庫

関 弥生

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−−平成22年7月−−

【特選 10句】

小諸より訪ね来られし汗の客

京都

安原 葉

俳磚へ朝な夕なの蝉時雨

大阪

宮崎 正

走り萩揺れ迎へくれ虚子の館

東京

河野美奇

蝉時雨今日は一人の記念館

大阪

辻 千緑

涼風の庭に日の斑重なれる

兵庫

田中節夫

五月雨を来て虚子館に雨宿り

岡山

大槻秋女

小鼓の由来をしかと梅雨の館

兵庫

橋本絹子

夏萩の咲き初む虚子の記念館

徳島

石原松女

海の日や比島に散りし父をふと

大阪

米澤江都子

大虚子を涼しく空へ飛ばす句座

兵庫

奥田好子

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−−平成22年6月−−

【特選 10句】

蜘蛛は囲を張れず虚子館庭手入

京都

安原 葉

合歓咲いて星のきざはしてふ角度

東京

稲畑廣太郎

下闇や師の俳磚を読みかへす

大阪

会田仁子

虚子泊雲泊月学び風薫る

東京

大久保白村

紫陽花のひとつひとつの彩深む

大阪

友井正明

薄暑解く俳磚の風でありにけり

兵庫

五十嵐哲也

五月闇俳磚千のほの明り

大阪

徳岡美祢子

虚子記念館の緑のふえしこと

大阪

多田羅初美

あの犬はもう居ぬ庭は五月闇

兵庫

田中節夫

花合歓の夢見がちなるさ揺れかな

大阪

石橋玲子

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−−平成22年5月−−

【特選 10句】

十年てふ館の未来へ卯波寄す

東京

稲畑廣太郎

放談の新茶に弾みつきにけり

兵庫

三村純也

虚子館は早や緑蔭のたゝずまひ

東京

今井千鶴子

青芝に木洩日さわぎやまざりし

京都

安原 葉

若蘆の中ゆ水音立ち上がる

岡山

石井宏幸

葉桜の木洩れ日光る芦屋川

東京

大久保白村

万緑や銘酒小鼓物語

高知

橋田憲明

虚子館に五月の風と入りにけり

兵庫

蔭山一舟

目瞑れば深山の匂ひ滝の音

兵庫

田中節夫

養生の芝に五月の雨となる

大阪

田原憲治

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−−平成22年4月−−

【特選 10句】

夕べまで花翳りなき虚子忌かな

兵庫

三村純也

芦屋川花満開の虚子忌かな

アメリカ

高橋カズ子

我のみとなりし遅日の虚子館に

京都

安原 葉

虚子の著に親しみ明日は昭和の日

東京

大久保白村

落椿鮮烈白き石畳

兵庫

田中節夫

黄桜の重し軽しと詩をこぼす

滋賀

森 ふみ子

誰彼を迎へ桂の芽ぶき急

兵庫

山之口倫子

人庭へ誘ふ水音夏近し

大阪

須知香代子

俳磚の弘子に見ゆ花日和

大阪

辻 千緑

俤のいつもどこかに花朧

兵庫

水田むつみ

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−−平成22年3月−−

【特選 10句】

水落ちて弾けて春を近づけぬ

大阪

岩垣子鹿

虚子館の理事会集ふ花衣

東京

稲畑廣太郎

還らざるひとよ淡墨桜咲く

京都

安原 葉

俳磚に故人の名増え鳥雲に

兵庫

三村純也

藤袴文庫誕生芽ぶく園

高知

橋田憲明

桂の芽紅ほどけしは花となる

東京

河野美奇

水増えて草芳しき芦屋川

東京

大久保白村

海おぼろ山おぼろなり芦屋川

神奈川

渡辺萩風

菰外し風入れ替る牡丹の芽

岡山

大槻秋女

満開のミモザは空の色となる

岡山

伴 明子

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−−平成22年2月−−

【特選 10句】

梅が香にこの悲しみを解かんと

東京

稲畑廣太郎

紫の芽の勢ひをり藤袴

東京

河野美奇

俳磚の弘子を探す余寒かな

兵庫

三村純也

生誕祭過ぎし虚子館あたたかし

京都

安原 葉

梅東風やおもかげをまた引き寄せて

兵庫

水田むつみ

対岸のひかりをつれて春の雪

鳥取

椋 則子

水音を増やし芽立を促せる

兵庫

田中節夫

弘子の葬終へ建国の日の館に

東京

大久保白村

春浅し虚子を身近に初版本

東京

大久保幸子

じゅしょうしきすこしきんちょう
チューリップ

兵庫

柏木律乃(小1)

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−−平成22年1月−−

【特選 10句】

読初の子規の世に旅してをりぬ

兵庫

山田弘子

鼻先で掠め取られし恋歌留多

兵庫

山田佳乃

俳磚にけふも風花日和かな

兵庫

三村純也

虚子木像年尾胸像にも御慶

東京

大久保白村

読初として藤袴文庫かな

兵庫

内田泰代

虚子館の華やぐ日なり初句会

兵庫

日下コ一

下萌の弾む川原を虚子館へ

兵庫

五十嵐哲也

待春の日ざしの木々に包まるる

兵庫

黒田千賀子

じりじりと膝寄ってくる歌留多取

兵庫

松田恭子

初旅の虚子館へ胸ふくらませ

石川

辰巳葉流

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