虚子記念文学館投句特選句 平成21年






−−平成21年12月−−

【特選 10句】

館師走十周年を指呼にして

東京

稲畑廣太郎

俳磚にその句見付けて漱石忌 兵庫 三村純也
虚子館を訪ふ歳晩の客として 京都 安原 葉
数へ日の文学館や明日までと 東京 大久保白村
落葉して力抜きゐる邸の庭 兵庫 山田弘子
冬芽みな光に向ふ力秘め 徳島 湯浅芙美
霜枯れてなほ咲く力ありにけり 兵庫 入谷千惠子
庭手入して残さるる枯尾花 兵庫 田中節夫
記念樹の枝の仔細を冬空へ 岡山 大槻秋女
落葉より落葉へ伝ふ径ばかり 大阪 岩垣子鹿

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−−平成21年11月−−

【特選 10句】

藤袴文庫の光冬ぬくし

京都

安原 葉

俳磚に雨の落葉の貼り付ける 兵庫 三村純也
ホ句の秋初版本より虚子の声 大阪 宮崎 正
玄関に彩の名残や冬の萩 兵庫 高田菲路
全山の雑木紅葉の中に居り 岡山 黒杭良雄
雨風の過ぎて小春の芦屋川 大阪 鶴岡言成
冬に入るいつもの生活ありにけり 大阪 辻 昌子
師の庭の木々に整ふ冬構 兵庫 玉手のり子
芝踏まぬ為の裏径落葉ふる 大阪 若槻香女
雨の色足して深まる冬紅葉 兵庫 山田佳乃

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−−平成21年10月−−

【特選 10句】

会二つともに盛会虫の秋

兵庫

三村純也

朴落葉して雨空を広げたる 兵庫 山田弘子
藤袴文庫包みし秋灯 兵庫 水田むつみ
露けしや虚子愛用の文机 広島 山本義郎
虚子館へ一番乗りや天高し 大阪 辻 千緑
菊月や虚子の生涯追ひ切れず 兵庫 長尾輝星
十銭の袖珍本に惜む秋 兵庫 長尾美代子
秋晴や早々着きし虚子館 兵庫 五十嵐哲也
朴落葉養生中の芝なるに 滋賀 大塚やすを
俳磚に今宵の月の如何ばかり 大阪 徳澤南風子

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−−平成21年9月−−

【特選 10句】

俳磚も我も野分めく木洩れ日に

京都

安原 葉

稲筵車窓に館へ急ぎけり 東京 稲畑廣太郎
閲覧の高窓明り秋めきぬ 兵庫 山田弘子
虚子館を訪ふ川沿ひに秋日傘 東京 藤森荘吉
爽やかに教へられたるなじみ集 兵庫 奥田好子
澄む水に逆らふ影のなかりけり 大阪 石橋玲子
敬老の日の虚子館に子規学び 東京 大久保白村
俳磚のかたへに脚立松手入 大阪 徳澤南風子
萩ゆらす風俳磚を磨く風 石川 赤島磨智子
揃へある露の熊手と竹箒 大阪 辻 順子

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−−平成21年8月−−

【特選 10句】

記念樹を慕ひし蝉の穴の数

京都

安原 葉

窓開けて処暑といふ日をうべなひぬ 兵庫 三村純也
横浜の思ひ出たどる館の秋 東京 大久保白村
踊唄遠く聞こゆる看取りかな 兵庫 和田節子
露台でき星をみるてふたのしみも 兵庫 大谷千華
木洩日を掬ふ掌秋涼し 岡山 山口喜代子
水音のたへまなくして秋館 大阪 松村伊具子
誰彼に逢へし虚子館蝉涼し 兵庫 五十嵐哲也
虚子館に落ちつく残暑歩み来て 兵庫 堀口俊一
俳磚の庭へドア開く蝉時雨 高知 長田貴代

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−−平成21年7月−−

【特選 10句】

人寄せて蚊を寄せて館華やげり

東京

稲畑廣太郎

俳磚に垂れ来し蔓の涼しさよ 兵庫 三村純也
噴水の躍る水影ありにけり 東京 荒川ともゑ
中庭の繚乱昨夜の大雷雨 東京 河野美奇
記念樹の一塊となる蝉時雨 兵庫 山田弘子
俳磚にすこしかかりし茂かな 鳥取 椋 誠一朗
梅雨深し虚子の足跡辿る館 鳥取 中村襄介
没後五十年虚子学ぶ館涼し 兵庫 内田泰代
松涼し一邸に聴く水の音 大阪 岡西恵美子
滑る水走る水音庭涼し 兵庫 渡辺しま子

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−−平成21年6月−−

【特選 10句】

入梅に色深めゆく館の庭

東京

稲畑廣太郎

談話室いま空つぽや蚊遣香 兵庫 山田弘子
俳磚も桂も梅雨に入りにけり 兵庫 三村純也
露涼し百日振りの文学館 東京 大久保白村
記念樹の緑蔭に入り触るる幹 京都 安原 葉
虚子といふ大きな標館涼し 東京 荒川ともゑ
灯の涼し守り継ぐもの展示して 大阪 加藤あや
片陰に息ととのへて虚子館へ 兵庫 五十嵐哲也
館涼し子規から虚子の世を学び 兵庫 田附光映
俳磚に吾が句加はる涼しさよ 大阪 石橋玲子

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−−平成21年5月−−

【特選 10句】

子規も居て虚子もゐて春惜みけり

東京

稲畑廣太郎

俳磚をかがやかせゐる青嵐 兵庫 三村純也
噴水の音聴きに来て日の斑かな 東京 藤森荘吉
落とす水噴上げる水庭みどり 兵庫 山田弘子
巡りきし展示を拝す館若葉 新潟 安原 葉
軽暖の足どり軽く虚子館へ 兵庫 黒田千賀子
記念樹の歳月重ね来し若葉 岡山 大槻秋女
夏めくや曾孫に似し虚子の像 兵庫 日下徳一
夏霧を脱ぎし六甲後にする 兵庫 北野淑子
牡丹の遅速の庭を行き来して 鳥取 椋 則子

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−−平成21年4月−−

【特選 10句】

俳磚に虚子忌の句なき虚子忌かな

兵庫

三村純也

帰り来る資料を待てる館若葉

兵庫

山田弘子

漸くに日和定まり花の昼

兵庫

長尾輝星

鎌倉へ芦屋へ花の旅重ね

広島

右田至鏡

松影を拾ひ花翳拾ひ行く

兵庫

小西真子

若葉雨館はしつとり象牙色

兵庫

田中節夫

大仰に風を捉へて萩若葉

岡山

山口喜代子

芦屋川海へと続く若緑

兵庫

てらにし孝

行春の風にさざめく庭の樹々

大阪

須知香代子

還らざるものへ暮春の雨しとど

大阪

石橋玲子

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−−平成21年3月−−

【特選 10句】

俳磚を確かめに蟻穴を出づ

東京

稲畑廣太郎

水ほぐれ日の斑のゆるる花の池

兵庫

田中節夫

慎ましく学ぶ虚子館枝垂れ梅

東京

望月詩念

半地下の部屋の句会の春寒し

兵庫

三村純也

花ミモザ海に近づく屋敷町

兵庫

平松洋南

光り降る春の落葉の頃の館

兵庫

山田弘子

あたたかや月斗俳句にまみえたる

千葉

吉野世津子

春光や虚子の闘志を見し館

大阪

西村浩風

買ひたての新車に降りし黄砂かな

兵庫

杉崎よしこ

彼岸会や存問長き母墓前

兵庫

佐藤源太郎

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−−平成21年2月−−

【特選 10句】

子規も来よ二月二十二日の館

東京

稲畑廣太郎

虚子没後五十年来る梅椿

新潟

安原 葉

春二月英訳為りし虚子百句

大阪

宮崎 正

水温む小さき小さき石の橋

東京

藤森荘吉

種蒔きし養生の土踏むまじく

奈良

橋本 博

木の芽吹くけはひの中の生誕祭

兵庫

宮地玲子

鳴雪忌明治遠しと思はざる

兵庫

山田弘子

南より黄沙追ひ越し虚子館へ

長崎

平尾圭太

計画を審議建国記念の日

東京

大久保白村

俳磚の庭に出づれば春時雨

東京

河野美奇

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−−平成21年1月−−

【特選 10句】

俳磚の隊伍を組んで春を待つ

兵庫

三村純也

あをあをと目に溢れたる若菜籠

兵庫

加藤睫子

記念樹のはや芽の尖る四温晴

兵庫

五十嵐哲也

先客と談話室にて御慶かな

東京

大久保白村

ポスターのあまた春待つ談話室

兵庫

山田弘子

俳磚の我が句我が名を読初す

大阪

多田羅初美

初日記みどり児の行ふくらみて

兵庫

岡澤ひろみ

水仙のかをりの中の集ひかな

大阪

藤本憲子

雪掻きて虚子館までの旅に出づ

鳥取

中村襄介

下萌や水辺の土の柔らかく

兵庫

黒田房子

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