虚子記念文学館投句特選句 平成20年






−−平成20年12月−−

【特選 10句】

冬木の芽記念樹といふ競ひかな

東京

稲畑廣太郎

極楽の文学是とし日向ぼこ

兵庫

三村純也

学ぶことありて師走の虚子館に

新潟

安原 葉

ポインセチア真正直な赤なりし

兵庫

山田弘子

紅葉散る水音聴かば静心

兵庫

田中節夫

晴れ渡る天皇誕生日の芦屋

東京

大久保白村

透けし紅重なれる紅冬紅葉

徳島

先山 咲

しばらくは夕日とどめてゐる枯木

大阪

岩垣子鹿

庭にある鶴の置物石蕗の花

東京

藤森荘吉

俳磚の庭で遊べり寒雀

兵庫

日下徳一

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−−平成20年11月−−

【特選 10句】

神無月虚子への心失せぬ館

東京

稲畑廣太郎

朴落葉ばさりと館の音となる

滋賀

森ふみ子

館小春遠き北国荒れをると

京都

安原 葉

露霜をもて俳磚を荘厳す

兵庫

三村純也

日を風をもぐり込ませて葦枯るる

兵庫

山田弘子

紅葉に帰国の一と日虚子館に

アメリカ

高橋カズ子

冬ぬくし木漏れ日ゆるる談話室

兵庫

田中節夫

真剣に句に向き合ひし文化の日

兵庫

河野ひろみ

照れば映え翳れば霞む紅葉かな

大阪

鶴岡言成

一邸の静寂をやぶり朴落葉

兵庫

熊岡俊子

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−−平成20年10月−−

【特選 10句】

秋風を背ナに闘将去りにけり

東京

稲畑廣太郎

石の色より移ろひて秋時雨

兵庫

山田弘子

予定表確かめてをり小鳥来る

兵庫

桑田永子

桂吹く風に名残の萩揺るる

徳島

湯浅芙美

日に眩し芒に眩し旅路かな

石川

辰巳葉流

秋日和手話軽やかに先を行く

兵庫

北野淑子

よく学び憩ふ虚子館小鳥来る

岡山

山口喜代子

金風の渡る記念樹仰ぎけり

愛知

富田道子

影に置く木洩日に萩風を置く

徳島

綾野静恵

水音に日ざしに館の秋深し

兵庫

中西あい

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−−平成20年9月−−

【特選 10句】

記念樹の下に秋暑を解きにけり

東京

稲畑廣太郎

館涼し月斗の筆の勢ひにも

新潟

安原 葉

虚子館に書簡を閲し子規忌かな

兵庫

三村純也

日々好日父百歳の秋彼岸

兵庫

松田恭子

穂芒の一糸一糸の光活け

兵庫

山田弘子

漂へる吾もひとひらの鰯雲

岡山

石井宏幸

木洩れ日の揺らぎ虚子館秋めきて

鳥取

椋 誠一朗

燈下親し子規景仰の月斗展

兵庫

五十嵐哲也

単線のホームに燃ゆるカンナの緋

徳島

上村京華

衒ひなく人を惹きつけ曼珠沙華

兵庫

長尾美代子

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−−平成20年8月−−

【特選 10句】

新涼や虚子文章に昂れる

島根

田中靜龍

旅南下訪ふ虚子館も秋涼し

新潟

安原 葉

俳磚の壁のどこかに鉦叩

兵庫

三村純也

底紅の紅に残りし今朝の雨

岡山

長江康子

残り咲く合歓五六輪空に映え

兵庫

松岡たけを

夏行の旅虚子館訪ふも組み入れて

島根

田中由紀子

秋晴れの芦屋の空を雁渡る

神奈川

細川悦人

俳磚に揺るる朝影花木槿

岡山

山口喜代子

繋船のしづかに揺れて秋の声

兵庫

松田恭子

芦屋川秋の端っこ流れけり

神奈川

小塚木兆

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−−平成20年7月−−

【特選 10句】

けふもまた一番乗りや館涼し

新潟

安原 葉

何となく清記用紙の梅雨じめり

兵庫

三村純也

海山の芦屋の夏も深む景

兵庫

桑田永子

大正の俳人涼し館展示

大阪

徳岡美祢子

炎昼の静寂の音を聞いてをり

兵庫

松田恭子

用ありてなくて訪ふ館灯涼し

兵庫

山田弘子

太陽に見失ひさう合歓の花

岡山

伴 明子

虚子館に咲くものの無く溽暑かな

兵庫

てらにし孝

空蝉の程には蝉の鳴いてゐず

熊本

鶴田幾美

萬緑の中橡一樹朴一樹

大阪

徳澤南風子

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−−平成20年6月−−

【特選 10句】

万緑や新幹線を書斎とす

東京

藤森荘吉

木下闇大邸宅の一部分

東京

稲畑廣太郎

しみじみとまでは濃からず梅雨桔梗

兵庫

三村純也

記念樹も茂ゆたかに迎ふ館

新潟

安原 葉

六月の透けるステンドグラスかな

岡山

綾野静恵

雨に伏す蛍袋を起こしけり

兵庫

松岡たけを

白仕上げ虚子館かざる半夏生

香川

原田 蕗

葭切や業平橋の袂にも

大阪

倉垣政一

下闇を抜けわが影を取り戻す

大阪

石橋玲子

虚子館を包む豊かな青葉風

大阪

西山えい子

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−−平成20年5月−−

【特選 10句】

似顔絵の虚子の鼻筋夏めける

東京

稲畑廣太郎

俳磚にしみて卯の花腐しかな

兵庫

三村純也

万緑に抱かれんと又訪ひし庭

兵庫

山田弘子

新緑の庭奥まりし水の音

新潟

安原 葉

軽暖の鵺塚橋に海の風

兵庫

田中節夫

五月晴記念樹桂梢高く

兵庫

五十嵐哲也

軽暖を来て水音にいこふ庭

兵庫

山下眞弓

よく見れば錦木の花咲きこぼれ

大阪

辻 千緑

母の日の娘母似となつてをり

大阪

鶴岡言成

海よりの風の葉ずれや館薄暑

兵庫

佐藤悦子

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−−平成20年4月−−

【特選 10句】

句に浸り過ごす虚子館うららかに

大阪

森 をさむ

記念館一人訪ねて虚子忌かな

兵庫

三村純也

行き右岸帰路は左岸を花の川

東京

大久保白村

鎌倉と花の吉野の旅話

兵庫

桑田永子

風抜ける枝垂桜を脱ぐやうに

岡山

綾野静恵

春潮に鳥あそび又人遊び

兵庫

長尾輝星

ミモザには眩しすぎたる海のいろ

大阪

松本直翠

六甲の山より街の朧かな

熊本

大賀要子

俳磚へ下りる石段椿落つ

兵庫

西出茂子

落花美しき芝生と垣間見て

徳島

丸川越司

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−−平成20年3月−−

【特選 10句】

暖かく聖木曜日迎ふ館

東京

稲畑廣太郎

俳磚に囀こぼれかかりたる

兵庫

三村純也

けふは又どっと咲きふえ初ざくら

新潟

安原 葉

春先に千の俳磚かがよへる

愛知

荻野淑子

虚子館を訪ふ足軽く旅うらら

愛知

金井千ゑ子

世を捨ても世に捨てられもせずさくら

兵庫

塩見恵介

句碑と館繋ぐ青きを踏みにけり

兵庫

田中節夫

春分の日の理事会や予算案

東京

大久保白村

あはあはとされどうすずみさくらかな

兵庫

長尾輝星

虚子館の息吹朱となり桂の芽

東京

河野美奇

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−−平成20年2月−−

【特選 10句】

虚子館の祝を荘厳したる雪

新潟

安原 葉

記念樹の木の芽の風と訪ふ館

兵庫

山田弘子

極楽の文学を恋ふ薄紅梅

東京

田治 紫

虚子生誕百年祝ぐや春の雪

兵庫

松岡たけを

かがやかぬなき俳磚に寒明けぬ

兵庫

三村純也

虚子よりのおくりものなる春の雪

兵庫

涌羅由美

二ン月や虚子館に漲れるもの

兵庫

長尾輝星

俳磚の千韻壁に下萌ゆる

大阪

徳澤南風子

底冷と共に巡れる展示かな

東京

藤森荘吉

祝意いま紅梅の香となりにけり

兵庫

大谷千華

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−−平成20年1月−−

【特選 10句】

虚子館へ一番乗りの年賀かな

大阪

辻 千緑

俳磚の千枚に年改まる

兵庫

山田弘子

慶びを分かつ友あり初句会

大阪

鶴岡言成

新しき風の予感や明の春

奈良

正岡 明

虚子館を訪ふ正月もはや五日

東京

大久保白村

俳磚の句を読みながら日向ぼこ

兵庫

三村純也

初旅の晴の虚子館まで続き

兵庫

五十嵐哲也

虚子館に明治の気骨学ぶ冬

鳥取

中村襄介

寒晴れて明日震災にあひし日よ

兵庫

信清愛子

俳磚に冬日の跳ねてをりにけり

兵庫

蔭山一舟

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