虚子記念文学館投句特選句 平成19年





−−平成19年12月−−

【特選 10句】

紅葉散る館の歴史を語りつつ

東京

稲畑廣太郎

端座して虚子像時雨待ち給ふ

兵庫

三村純也

人あふれ冬日あふれて談話室

東京

藤森荘吉

虚子館の客みな去りぬ日短

新潟

安原 葉

殖えてゆく俳磚冬日親しかり

兵庫

堀口俊一

冬ぬくし霽月展の虚子賀状

東京

大久保白村

鉄扉越し落葉のお庭拝見す

香川

永森とみ子

世にふりし芦屋の松にしぐれかな

兵庫

田中節夫

極月の怱忙わすれ館にあり

石川

笠森きみゑ

早々に手帳買ひ換へ十二月

兵庫

深尾真理子

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−−平成19年11月−−

【特選 10句】

虚子館に先客一人暮の秋

新潟

安原 葉

俳磚に横文字一句文化の日

大阪

團野三正

霽月を学び十一月も過ぎ

東京

大久保白村

俳磚の庭朴落葉まぎれなし

兵庫

三村純也

桂吹く風に名残の萩もゆれ

兵庫

渡辺しま子

庭瀧も筧も絶えて館の冬 

兵庫

すがの弘女

北風を来て遺影の笑につつまれし

兵庫

五十嵐哲也

朝もみじ仰ぎ開館待ちにけり

愛媛

和田 糺

水音の静寂ひきよせ朴落葉

兵庫

篠原弘子

小春日の館にゆたかな時間かな

兵庫

玉手のり子

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−−平成19年10月−−

【特選 10句】

年尾忌を修し拝する年尾像 

東京

稲畑廣太郎

やや疲れたるか記念樹はや黄葉

新潟

安原 葉

風邪心地虚子館に来て晴れにけり

兵庫

三村純也

守旧とは挑む力よ萩芒

兵庫

山田弘子

鵺塚の松亭々と新松子

兵庫

西田のぼる

虚子館の今日は静かな秋日和

大阪

辻 千緑

風の見ゆ蘆の穂絮の浮遊かな

兵庫

田中節夫

小鳥来る邸に水音風の音

兵庫

大谷千華

俳磚の千の聲あり秋の庭

京都

藤山準司

虚子記念館に過ごして日短

愛媛

横田青天子

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−−平成19年9月−−

【特選 10句】

虚子館の九月の扉押しにけり

岡山

綾野静惠

台風に新幹線立ちつぱなし

東京

稲畑廣太郎

一塊にもつれ翔ちたる秋の蝶

神奈川

秋吉 斉

萩隠れなる俳磚も二つ三つ

兵庫

三村純也

虚子館に学び子規忌を修しをり

新潟

安原 葉

髭に書に霽月親し館の秋

東京

大久保白村

爽やかに今日よりの知己談話室

兵庫

山田弘子

虚子館の秋冷の風まぎれなく

鳥取

椋 誠一朗

日の斑ゆれ佇む処みな涼し

香川

小西としじ

雲悠々二百十日の館の空

兵庫

長尾輝星

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−−平成19年8月−−

【特選 10句】

俳磚に草木に処暑の風すこし

兵庫

三村純也

虚子館に読み観ることの涼しさよ

新潟

安原 葉

戸を開けば降り注ぎたる蝉時雨

岩手

浅利清香

虚子館に立ち寄り臨む夏行かな

石川

大橋美代子

旅暑しとも素通りの出来ぬ館

石川

北 重子

喜雨来る音のぽつりとかくれみの

岡山

長江康子

展示替済みて俄に秋めきぬ

兵庫

山田弘子

虚子館の出入りのたびに蝉時雨

石川

辰巳葉流

身ほとりの移ろひ確かちちろ啼く

兵庫

小林智子

俳磚の彼の句蛞蝓横断す

石川

西やすのり

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−−平成19年7月−−

【特選 10句】

師の庭に長居をすれば薮蚊かな

東京

藤森荘吉

虚子館に見し巻頭の涼しさよ

新潟

安原 葉

病葉やかくれみのとは知らざりし

青森

工藤乃里子

来館の梅雨をいとはぬ傘並ぶ

兵庫

三村純也

虚子館へ片陰譲り合ひながら

兵庫

五十嵐哲也

朱筆まで涼しきものに虚子の稿

福岡

黒田純子

初蝉の声まぎれなき力かな

兵庫

山田弘子

虚子館を包みて余る蝉時雨

岡山

長江康子

俳磚に淡き香展げ合歓の花

大阪

岡西恵美子

朝顔の生気の満ちる虚子館に

京都

藤山準司

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−−平成19年6月−−

【特選 10句】

虚子館にまかり出でたる蟇

兵庫

三村純也

汀子邸より記念館茂りゆく

東京

稲畑廣太郎

虚子館を訪ふ旅発ちや明易し

新潟

安原 葉

俳磚の一句にたたむ日傘かな

福岡

持永真理子

虚子館の歳月刻む夏木かな

東京

柏木佐智子

白雲へ泰山木は杯かかぐ

兵庫

山田弘子

虚子館になじみし街の五月晴

東京

大久保白村

夏館虚子子規遺すもの清し

東京

大塚芳恵

大虚子の世界見し目を新緑に

東京

黒沢三主寿

俳磚の庭の涼しさ分かち合ふ

大阪

須知香代子

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−−平成19年5月−−

【特選 10句】

満々と水を湛へて川薄暑

東京

稲畑廣太郎

俳磚の薄暑暮れゆく空の下

東京

今井千鶴子

俳磚をつたひこれぼれ露涼し

兵庫

三村純也

汀子邸より虚子館へ蟻の道

東京

大久保白村

虚子館の若葉の風の中にかな

東京

河野美奇

新緑に染む円卓も胸像も

兵庫

山田弘子

六甲の恋しと蛍袋咲く

兵庫

桑田永子

雲を見て風を見てゐる端居かな

兵庫

田中節夫

若葉して高さ競へる館の樹々

兵庫

長尾輝星

百年のホ誌表紙展風薫る

大阪

徳澤南風子

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−−平成19年4月−−

【特選 10句】

花冷の俳磚露を帯びてゐし

兵庫

三村純也

手庇で仰ぐもの増え春深し

兵庫

五十嵐哲也

柏亭と虚子の双幅花明り

大阪

徳澤南風子

みよし野の花の余韻を虚子館に

新潟

安原 葉

手を打てば崩れさうなる大牡丹

兵庫

冨永宮枝

庭手入れはかどつて居り竹の秋

京都

吉田節子

虚子十態拝し虚子忌のこころかな

兵庫

内田泰代

大正の虚子平成の春燈下

東京

大久保白村

車窓より始まつてゐる花の旅

兵庫

山際ヨネ子

養生の芝もととのひ夏隣

兵庫

渡辺しま子

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−−平成19年3月−−

【特選 10句】

豆雛受付といふ落着きに

東京

稲畑廣太郎

俳磚にゝと止まりゐる春の蝿

兵庫

三村純也

俳磚の壁の新旧木瓜の花

兵庫

山田弘子

計画を変へねばならぬ花予報

兵庫

田中節夫

虚子館の咲くもの芽吹くものを訪ふ

兵庫

徳岡美祢子

一邸のミモザに門のひらかるる

兵庫

熊岡俊子

揺れ戻すとき花ミモザ風となる

大阪

田原憲治

遺りたる俳磚とあり永き日を

兵庫

桑田永子

虚子館の椿風染むほど紅し

香川

小西としじ

虚子像の拝す心に初桜

滋賀

堀田 民

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−−平成19年2月−−

【特選 10句】

旅南下して虚子館に暖し

新潟

安原 葉

虚子館の紅梅のやや疲れをり

東京

今井千鶴子

庭といふ館の歳月春立てり

東京

稲畑廣太郎

虚子館の庭をうろうろ恋の猫

兵庫

三村純也

立春のひらがな多き虚子の句碑

東京

坊城俊樹

記念館の近づく館に春立ちぬ

兵庫

山田弘子

川風の隙間に残る寒さかな

東京

今井肖子

リハビリは楽しむものと春を待つ

東京

藤森荘吉

温暖化梅の文学館の景

アメリカ

鈴木ロジー

俳論の熱きディベート春館

石川

西田さい雪

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−−平成19年1月−−

【特選 10句】

虚碧相対す闘志や明の春

兵庫

長尾輝星

虚子館を恵方と信じ来し五年

鳥取

椋 誠一朗

寒牡丹秘仏の如く見えけり

兵庫

三村純也

碧の書の変遷展示館の冬

東京

大久保白村

臘梅の千の蕾にある気品

岡山

高橋玲女

初明りステンドグラスの青より来

岡山

綾野静恵

虚子館の庭に弾める初雀

岡山

福井万恵

恵方道とは虚子の道ホ句の道

石川

今村征一

買初の活字かゞよふ虚子百句

福井

山崎越堂

大寒や地球揺るがす温暖化

兵庫

藤本美枝子

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