虚子記念文学館投句特選句 平成18年






−−平成18年12月−−

【特選 10句】

虚子館に師走の喧の及ぶなし

兵庫

三村純也

冬紅葉とはさらさらとからからと

東京

稲畑廣太郎

マロニエの冬芽の先の風尖る

滋賀

礒田ひろみ

碧の書の変遷学ぶ冬灯

東京

大久保白村

一枚に散り敷き風の朴落葉

香川

福家市子

虚子館の色の一つに返り花

滋賀

野瀬章子

虚子館を訪ひ十二月締めくくる

福井

高島松陰

年の瀬の俳磚に告ぐこと多し

青森

工藤乃里子

俳磚の己が光を放つ寒

岡山

奥山登志行

俳磚の庭つづきなる落葉踏む

大阪

徳澤南風子

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−−平成18年11月−−

【特選 10句】

文化の日西への旅は欠かされず

東京

稲畑廣太郎

俳磚のはや昃りたる石蕗の花

兵庫

三村純也

俳磚に光よ影よ木の葉散る

兵庫

山田弘子

露けしや虚子の書碧梧桐派の書

東京

大久保白村

逝く秋や俳磚故人一人増え

兵庫

五十嵐哲也

青虎師の俳磚悼み片時雨

兵庫

黒田千賀子

碧梧桐書体奔放冬日向

岡山

福井万恵

日の当る俳磚にまたひと時雨

岡山

山口喜代子

悠然と白雲流る片時雨

兵庫

田中節夫

ぬえ塚の風に散りたる敷松葉

大阪

井手千寿香

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−−平成18年10月−−

【特選 10句】

俳磚の壁のどこかに鉦叩

兵庫

三村純也

虚子館の地下には地下の秋の声

兵庫

山田弘子

揺れ合うて風の先なる萩の花

岡山

綾野静恵

大らかな素逝の句文字露けしや

大阪

尾ア千鶴

長き夜や手許離さぬ虚子百句

兵庫

柴田亜沙子

秋灯下いのちの一句一句かな

兵庫

内田泰代

秋声を聞く虚子館の出入かな

兵庫

長尾輝星

眞似できぬ碧の字躍る館の秋

兵庫

堀口俊一

千枚の俳磚に触れ秋の蝶

大阪

綿谷千世子

虚子を読む講師爽やか記念館

兵庫

鍛冶周半

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−−平成18年9月−−

【特選 10句】

庭の円俳磚の角秋日和

兵庫

山田弘子

俳磚を隠さうべしや枝垂萩

兵庫

三村純也

六甲の山気放ちて秋高し

東京

稲畑廣太郎

五回目の漫録展や館九月

東京

大久保白村

虚子館の俳磚なべて露けしや

滋賀

野瀬章子

秋灯下子規の気迫の文字迫る

滋賀

磯田ひろみ

青空へ九月の合歓として咲けり

大阪

田中光祥

秋高くなりつつありし六甲山

福井

高島松陰

はや萩の風情こぼせし虚子館に

兵庫

中西あい

青空をノックしつづけ吾亦紅

京都

吉田節子

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−−平成18年8月−−

【特選 10句】

六甲の日もすがらなる初嵐

兵庫

三村純也

終戦の日や初日なる素逝展

東京

大久保白村

しばらくは峙つごとき残暑かな

兵庫

長尾輝星

升さんに高校野球告げる秋恵

岡山

福井万

羯南も身近になりし館涼し

新潟

安原 葉

虚子館に居るだけで気の爽やかに

大阪

宮崎 正

虚子館へ人の流れとなる秋暑

三重

山崎美代子

俳磚とベンチ増えゐて庭涼し

大阪

若槻香女

人となり偲ぶ遺墨やホ句の秋

三重

椿本格三

記念樹の高き梢より秋の声

兵庫

五十嵐哲也

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−−平成18年7月−−

【特選 10句】

俳磚の光らざるなし梅雨明くる

兵庫

三村純也

俳磚の文字梅雨明を誘へり

東京

稲畑廣太郎

梅雨明を待つ千枚の俳磚も

新潟

安原 葉

蝉よりも早く起きたる旅出かな

高知

一宮十鳩

館を出て東灘区へ夏の蝶

東京

大久保白村

俳磚の一千となり草茂る

東京

藤森荘吉

虚子館に旅の一と日の梅雨籠

石川

柿島貫之

ひとつとて同じ色無き草みどり

東京

渡辺美紀

久闊の館に涼しき出逢ひあり

福井

高島松陰

交はしあふ出水見舞や談話室

兵庫

山田弘子

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−−平成18年6月−−

【特選 10句】

俳磚の千基に夏至の風そよぐ

東京

稲畑廣太郎

俳磚の明るさ巡る夏帽子

福井

高島松陰

千枚の俳磚にある梅雨晴間

兵庫

山田弘子

虚子記念館の扉の梅雨湿り

兵庫

三村純也

談話室大きく開けて蚊遣香

兵庫

西村正子

合歓の花仰ぎ二階へ遠会釈

大阪

米澤江都子

二階より地下より声や館涼し

東京

大久保白村

俳磚の歳月郁子の茂りにも

大阪

徳澤南風子

円形の石畳ふむ木下闇

兵庫

森 一草

風親し二階窓辺の合歓の花

新潟

安原 葉

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−−平成18年5月−−

【特選 10句】

虚子記念文学館に着き涼し

静岡

嶋田一歩

俳磚に卯の花腐し暗からず

兵庫

三村純也

理事会を文学館に子供の日

東京

大久保白村

聖五月芦屋に花鳥諷詠史

石川

今村征一

訪ふ度びに俳磚つまりゆく五月

香川

冨永登美子

朝風にロココの椅子とチューリップ

岡山

福井万恵

覗きたき蛍袋の秘密かな

岡山

山口喜代子

リラの香をたどりて邸の奧まりし

香川

福家市子

はつなつの風をはらみて始発便

東京

藤森荘吉

漱石の猫を見て来し館新樹

東京

河野美奇

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−−平成18年4月−−

【特選 10句】

なほ残る枝垂るる花を惜しみけり

アメリカ

高橋カズ子

漱石の猫の原稿風光る

大阪

森 をさむ

ここだ落つ椿も雨の情かな

大阪

束野淑子

「こころ」読み耽かしたるころ暖し

兵庫

桑田永子

師の案内薄墨桜仰ぎけり

大阪

辻 千緑

虚子語る漱石の秘話暖かし

兵庫

西田のぼる

祝ぎの句座とは虚子のもと花のもと

兵庫

長尾輝星

虚子館の庭一面に春落葉

東京

有田広美

俳磚に掃かぬがよろし春落葉

熊本

鶴田幾美

虚子百句永き日の下完結す

大阪

長宗信爾

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−−平成18年3月−−

【特選 10句】

some thing refuse to be chased,
they must, instead, come to you
like new love and spring
追へば逃げでもいつか来る恋と春(長山あや・訳)



James Henry
(ジェームズ・ヘンリー)

水音に沿ひ貝寄風に抗ふ歩

奈良

橋本 博

漱石も虚子もモノクロ鳥曇

東京

大久保白村

踏青の一歩に空の晴れてきし

大阪

今井妙子

未だ風の色の中なる花ミモザ

岡山

綾野静惠

春灯下虚子の世界と漱石と

兵庫

大橋豊子

賑はひてどこか淋しき雛流し

岡山

長江康子

虚子館へ一直線の青き踏む

広島

右田至鏡

虚子館へ桜堤を通り抜け

兵庫

渡辺美子

虚子館に降り佇つ視線梅に向く

石川

柿島貫之

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−−平成18年2月−−

【特選 10句】

催しは昨日でありし春の雪

東京

今井千鶴子

虚子館の祝のもてなし暖し

新潟

安原 葉

建国の日の虚子館に五つの輪

埼玉

大久保白村

立春の光をつれて記念館

岡山

綾野静恵

底抜けの青空もまた春立つ日

滋賀

野瀬章子

山笑ふ気配の早き芦屋かな

東京

丹羽ひろ子

記念樹の掛け算のごと芽吹きをり

香川

福家市子

臘梅の夕日逃さぬ黄の揃ひ

兵庫

五十嵐哲也

七階の窓に淡雪舞ひ上がる

東京

今井肖子

椿咲き芦屋に国際俳句祭

兵庫

鍛冶周半

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−−平成18年1月−−

【特選 10句】

さりげなく深く臘梅香りけり

東京

稲畑廣太郎

薄氷の川の黙とく日差くる

京都

吉田節子

虚子囲む兄のまなざし春隣

愛知

竹中良枝

初刷の「こゑ」を携へ虚子館へ

埼玉

大久保白村

虚子館にきざむ歳月年新た

大阪

尾崎千鶴

凍ゆるむ地震語るとは偲ぶこと

兵庫

五十嵐哲也

蝋梅や初心に還る記念館

愛知

杉浦千鶴子

読初の如く俳磚追ってをり

兵庫

奥田好子

六朝の墨痕躍り明の春

大阪

束野淑子

人波に少し離れて残り福

兵庫

こうのしづこ

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